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2016/07/8

平成28年第二回定例会 予特質問① ~道内の下水道施設の維持管理と担い手づくりについて~

この質問は、私たちの文化的で衛生的な生活を支える基盤として、絶対に欠かせない「下水道」機能の維持・管理について質問させていただいたものです。

 

社会保障や年金拠出などいわゆる生活を第一として、「インフラ整備(道路等)はムダ!」だと簡単に声高に訴える方がいらっしゃることは承知しています。

しかし、普段は土の中に埋設されていて、目にすることの少ない下水道施設が、私たちの生活を如何に力強く支えてくれているのかを、より知っていただけるように議論を尽くしてまいりたいと考えています。

 

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【道内の下水道施設の維持管理と担い手づくりについて】

 

平成27年11月に「水防法等の一部を改正する法律」が施行され、下水道管理をより適切なものとするため、下水道維持修繕基準の創設等所要の措置を講ずることとされています。

その中で、持続的な機能確保のための下水道管理について、事業計画の記載事項として「点検の方法・頻度」を追加されたことは、道も承知されていることと思います。

 

北海道内における下水道事業については、道内151市町村において実施されていて、その下水道管渠(かんきょ)整備延長は、約32,200㎞に及んでいます。

その内、札幌市分は約8,230㎞、道事業分は約358㎞と伺っております。

 

札幌市においては、1972年に開催された「札幌オリンピック」に向けた道路や鉄道などの他のインフラと同様に、1970年に19.2%でしかなかった下水道普及率が、わずか5年後の1975年には64.5%にまで飛躍的に上昇したと伺っております。

 

時は巡り、現在の札幌にあっては、それまでに整備された下水道管渠のうち、50年以上経過したものが全体の4.3%にあたる約350㎞に、30年以上経過したものが全体の70%にあたる約5,740㎞となるそうです。

近年では年間10㎞程度の管路の改築事業量であったのに対して、20年後には年間60㎞、事業費にして90億円規模の改築を推し進められようとしています。

 

一方で、道事業分の約358㎞については、50年以上経過しているものは無いものの、30年以上経過しているものは全体の41%にあたる約146㎞となっているとのことでありました。

また、札幌市と比較して大きく異なる点は、下水道管渠や下水処理場については、道の責任において施工した後で、「石狩川」「十勝川」「函館湾」の3つの流域下水道については、これらを構成する9市8町が下水道法の規定に基づいて道と協定を結び、下水道施設の維持運営を行っていると伺いました。「石狩湾特定公共下水道」については、道が維持管理していると伺っています。

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①    道が管理する下水道施設の改築と長寿命化計画策定状況について

 

まず、これらの道によって施工された下水道施設の改築については、道の責任において実施していると伺っておりますが、これらの長寿命化計画について、その進捗状況を含めて伺います。

 

【答弁】

道が管理する下水道施設の長寿命化計画の策定状況についてでありますが、

 

〇 終末処理場の長寿命化計画については、

     平成27年6月に策定した「北海道インフラ長寿命化計画」の

  個別施設計画として策定をしたところであり、道では、

  この計画に基づき、予算の平準化を図りながら

  改築等を進めているところ。

 

〇 また、管路の長寿命化計画については、現時点で未策定となっている。 

 

 

②    市町村が管理する下水道施設の改築と長寿命化計画策定状況について

 

それでは、市町村の長寿命化計画の策定状況と、その進捗状況を含めて伺います。

 

【答弁】

市町村の長寿命化計画の策定状況についてでありますが、

 

 〇下水道事業を実施している151市町村のうち、

  平成27年度末時点で処理場・ポンプ場の計画を

  策定しているのは107市町村、

  管路の計画を策定しているのは31市町となっているところ。

 

〇これらの市町村は、それぞれの長寿命化計画に基づき、

  改築を進めているところ。

 

  〇 道といたしましては、今後も、市町村に対して

  長寿命化計画を早期に策定できるよう支援して参りたい。

 

【指摘】

道内において多くの自治体が、下水処理施設の長寿命化計画や管路更生計画を策定していない現状は、非常に憂うところだと捉えています。

また、答弁の中で「早期に策定」とありましたが、本来ならば「いつまで」にをお答えいただきたいところなのです。

計画の主体は市町村ですから、道の立場では支援程度に留まってしまうジレンマは理解できますが、この課題については、市町村と業界の皆さんと道が三位一体で取り組まなくてはいけないものであるのですから、特に自治体の皆さんに十分な説明をしつつも、三位が実現可能な適正な計画策定を急がれますように強く要請しておきます。

 

 

③    道内自治体との連携について

 

道内自治体は、厳しい財政状況などにより執行体制が脆弱化していると承知していますが、道として道内各自治体との連携について検討している内容について伺います。

 

【答弁】

道内自治体との連携についてでありますが、

 

 〇道では、各自治体で下水道事業に携わる技術職員の

  減少により、技術の継承が懸念されていることから、

  各自治体の技術職員同士の情報交換や

 

  人的ネットワークを構築することを目的として、

平成26年度に「北の下水道場」を立ち上げ、

     国の職員による技術的講演やグループ討議を行うなど、

  自治体が抱えている様々な課題について、

  情報共有を行い、連携方策などを話し合ってきているところ。

 

  〇また、人材育成を図る目的で、

  市町村の下水道担当職員を平成8年度から研修生として

  道に受け入れることや各種会議等様々な機会を通じて

 

  市町村に対し、技術的課題に関する情報提供を行うなど、

  市町村職員の技術力向上に努めているところ。

 

 

近年では、管の改築工事を行う際に、地面を掘らずに、古い管の中に新しい管をつくる管路更生工法が行われており、この内面更生の工法は、札幌市においては、管路改築工事のうち8割から9割近くを占めるまでになっているそうです。これは今後も有効な工法であることは言うまでもありません。

こうした管路更生工法では、自社施工できる企業は一般的に限られる上に、中には1億円ほどかかる専用機械の導入や各種技術者の育成など、業界にとっても新たな負担が発生し、増してくるのではないかと危惧するところです。

更には、札幌市における先行事例が示すように、この工法での担い手の不足が顕著となってくることが明白なのであります。

 

 

④    管更生工事の担い手づくりと情報共有について

 

では、道では、業界の皆さんとどのような情報共有・情報交換を行っているのでしょうか。伺います。

 

【答弁】

業界への情報提供についてでありますが、

 

  〇 道では、これまで業界が主催する研修会などに

   依頼を受けて講師として参加し、経過年数別の管渠延長や

   管路更生工事の実施状況、道内の下水道の現状について、

   情報提供を行ってきたところ。

 

 

これは、道内各自治体の下水道施設についても同様なのであります。

道分や札幌市ほど間近なものではないものの、全体で23,600㎞となっていて、50年以上経過したものが全体の2.1%にあたる約490㎞に、30年以上経過したものが全体の33%にあたる約7,700㎞となるそうです。その規模は膨大です。決して将来のこととして見過ごすことはできないものであります。それほどまでに私たちの生活に密着していて、衛生的な生活の基盤を支えるものなのであります。

 

札幌市分だけでも途方もない再生量が見込まれているのに、そこに道事業分が、道内自治体分が加わってくる20年後へ向けての再生量は、とても現状の施工能力では対応しきれるものでないことは明らかです。

 

 

⑤    下水道施設の改築事業の見通しについて

 

それでは、道として、道分や札幌市を含めた道内各自治体の下水道施設について、更には更生事業についてどのような見通しであるのかの見解であるのか伺います。

また、コスト低減や新技術開発に向けて、道としてどのような協力・支援ができるのか合わせて伺います。

 

【答弁】

下水道施設の改築事業の見通しについてでありますが、

 

 ○ 道や札幌市を含む道内各自治体の管路施設は、

 布設後30年以上経過するものが4割を超え、

  老朽化が進んでいることから、

  今後の改築事業は年々増加していくものと認識。

 

〇平成27年の下水道法の改正により、

  管路施設について、腐食のおそれのある箇所を、

5年に1回以上の頻度で点検することが義務化されたところであり、

  今後各自治体は、その点検結果と老朽化調査などを併せて、

  長期的な工事量の見通しを立てることとしており、

  道としてはそれを集約・平準化した上で、

 将来的な工事量として把握して参りたい。

 

 〇 また、今後、各自治体からコスト低減を

求める声が高まることが想定されることから、

   道としては、各自治体のニーズを業界や、

   工法の技術審査を行っている公的機関にお伝えし、

   新技術の開発などを促して参りたい。

 

 

ついては、管渠改築や下水処理場設備改修については、全道レベルで前倒しして実施し、長期に渡る工事量の平準化を行うことが必要です。これらを業界の皆さんと共に全道レベルで長期にわたって協議していく場が必要となります。

道が主体となって管理する対象ではないものの、札幌市を含めた道内自治体や業界と連携を密にしながら、常に新技術を用いた工法の開発を基より、法律改正の趣旨に則った長寿命化計画や業界、専門工事業者や担い手の育成に努めなければならないと考えています。

それは結果的に、道内業界による安定的な施工の推進を図ることにつながります。これこそが、正に中小企業支援策と言えると確信しています。

 

 

⑥    地元専門工事業者の支援について

 

では、主たる事業所が道内ではない専門工事業者を使用する場合には理由書を添付させるなど、入札参加資格を明らかにした上で将来の入札方法を検討することや、道内の中小企業育成を主眼とした直営工事の可能な入札参加業者や各種技術者の育成などは、中長期的な視野で地元企業の支援を行っていかなければならない重要な政策だと判断することができます。

これも、中小企業支援策にもつながりますし、改正品確法の主旨を保つ観点からも整合性は保たれるものと確信しています。

また、下水道機能は、災害対応を含む地域維持や、地域経済を担う、或いは危機管理対応という観点からも、その維持管理は欠かすことの出来ないものであります。

その意味からも、その役割を果たすのは道内企業であって、しかも人材や機械そのものを有している専門工事業者が、今後より活躍していただくことが望ましいと、私は信じています。道として、どのような支援が可能であるのかを伺います。

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【答弁】

 地元専門工事業者の支援についてでありますが、

 

   〇 道といたしましては、

   経済の発展を支える社会資本整備に

   必要な公共事業予算の確保に努め、

道内建設業の持続・発展が図られるよう、

   しっかりと取り組んで参る考え。

 

【指摘】

いま答弁いただいた内容は、これまで取られてきた道の立場を示していただいたものでしかないのです。

この場で申し上げていることは、下水道施設の更生にあたっては、地元の中小企業支援策として優遇させていくことが必要であるということです。

そうしてでも下水道機能を地元企業の能力内で維持していくことが、地域の力に、まちの力につながっていくと信じているからです。

この点については、今後も取り上げてまいりますので、早速にでも具体策を検討していただけるように申し添えておきます。

 

 

⑦    今後の工事量の周知や担い手づくりについて

 

よって、業界や地元企業が将来の工事量を見通した上で、多額の先行投資を行わなければならないのだとすると、地元企業支援を核とした将来の工事量を周知し、情報を共有していく必要があるとも考えられますが如何でしょうか。

 

【答弁】

今後の事業計画の周知や情報共有についてでありますが、

 

   〇 管路の老朽化対策を推進する上で、

   地面を掘らずに施工できる管路更生工法は、

   地下埋設物がふくそうしている都市部において、

 今後も有効な工法と考えているところ。

 

   〇 管路の老朽化対策は今後増加が見込まれることから、

業界や専門工事業者に将来を見据えて準備をして

いただくことは重要であり、

道としては、今後の事業計画を周知し、

情報共有することが必要と考えている。

 

 

さらに、東京都や大阪府、横浜市などが外郭団体などを通じて、官民の連携によって海外への水道事業展開を図る動きも出てきています。これは「民営化」の一環と言ってもよいのではないでしょうか。今後、道内の自治体をも含めた事業広域化などの再編が見込まれる分野に在っては、真剣に検討しておく時期に突入していると考えています。

道内自治体の技術職員数に不足が生じていたり、人口減少に伴って使用される頻度が下がってくることによって起きる下水道施設維持に関する課題と、一方では、大都市部で検討され始めている下水道事業の小規模化の課題が同時に進行する道内では、それぞれの地域で抱える課題の内容が大きく異なってくることが想定できます。

 

⑧    下水道の課題と今後の取組みについて

 

このように下水道工事における将来的な不安が明らかになった今、道は、今後どのように管路の改築についての長寿命化計画を策定し、札幌市を含めた道内自治体とどのような連携をとりながら、本質問で提案させていただいた中小企業支援や各種技術者や担い手の育成を推し進められるお考えであるのか伺います。

 

【答弁】

管路更生工事の担い手づくりについてでありますが、

 

   〇 道としては、今後、管路の長寿命化計画につきまして、

施設の状況や、調査点検の結果を踏まえて

   順次策定していく考え。

 

  〇 各自治体とは、全道の担当者会議などを利用し、

   長期的な工事量の見通しと平準化について、

   情報共有を図るなど連携をとって参りたい。

 

  〇 また、業界に対しては、

   研修会などのさまざまな機会を通じて、

   長期的な事業計画の見通しについて、

 積極的に情報発信をしていくことで、

   担い手づくりの環境を整えて参りたい。

 

 

⑨    下水道施設の維持管理に対する今後の取組みについて

 

最後に、これまでの質問を踏まえた見地から、下水道施設の維持管理に対する今後の取組み姿勢について伺います。

 

【答弁】

下水道施設の今後の取り組みについてでありますが、

 

  〇 道内の社会資本は道民の皆様の生活や経済活動を支える

  重要な社会基盤であり、これらを健全な状態に保つため、

     適切な維持管理に努めていく必要があると考えておりますが、

     本道の建設業は、これまでの建設投資額の大幅な減少により、

 厳しい経営環境に置かれていることなどから、

     若年者の入職が大きく減少しており、

     担い手の確保・育成は喫緊の課題と認識。

 

〇 特に、下水道は、道民の生活環境に直接関わる

   重要な施設であると考えており、

 道といたしましては、各自治体と連携をとり、

   今後の事業計画の見通しについて、建設業団体を含め

   広く情報提供を行うなどして、

 その計画的な老朽化対策と適切な維持管理を、

   進めていく必要があると考えている。

 

 

【指摘】

質問の中で何度となく繰り返してきたことでありますが、下水道機能の維持は、人が衛生的に暮らしていく上で欠かせない重要な課題であることは間違いないことなのです。

その下水道機能の維持を誰が担うのか、もう一度考えていただきたいのです。

それは、道内の自治体と、業界の皆さんと、道が三位一体となって取り組むべきことであるに違いありません。

近い将来に、現在の施工能力を遥かに超える「施設の改修工事」や「管路の更生工事」が発生することは間違いないのです。

それにどう取り組んでいくのか。業界の皆さんにどう協力していただくのか、協力していただくために、自治体として何が出来るのか。

答えは簡単です。見通しを立てて、淡々と準備を進めていくしかありません。

正しくそれが自治体しか果たせぬ役割なのだと考えています。

これ以上の先延ばしは何の得にもならないのです。

是非、積極的に取り組んでいただけますように最後にもう一度お願いしておきます。