
約1カ月続いてきた平成28年第一回定例会も、明日で閉会となります。
その前日に環境生活委員会が、先ほど開催されました。
先月の前日委員会(定例会開会前日)で触れた「イランカラプテ・キャンペーン」を少し深堀りして質問させていただきました。
アイヌ文化を活用して、北海道が元気になる取組みを重ねていく必要を道側と確認し、具体的な手段に落とし込んでいく作業がこれからも続きます。
新聞報道にもありましたが、環境生活部長も新年度に交代となるようです。
新執行部の下でも、各施策が確実に実行できるように議論を深めてまいります。
よろしくお願いいたします。
北の元気玉 道見やすのり
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【アイヌ文化の活用について】
① アイヌの文化財等について
先月の前日委員会で「イランカラプテ・キャンペーン」について質問したところでありますが、本日は、この点について少し深堀りして質問を展開したいと思います。
「イランカラプテ・キャンペーン」は、国民のアイヌ文化等への理解を目的とした国家プロジェクトと位置付けられています。
私たちは、この好機を北海道の魅力の発信の手段として活用しない手はありません。
そんなアイヌ文化を身近に感じ、触れることのできる手段の一つとして、アイヌの人たちの生活や風習を表現された芸術品・美術品・文化的資料・その他優れた民芸品が存在すると承知していますが、まずは、どういったものを文化財として把握し、それらがどこで、どのように保存・活用されているのかについて教えて下さい。
【答弁】
アイヌの文化財についてでありますが
○ 文化財保護法では、彫刻や工芸品等の有形文化財、
演劇や音楽などの無形文化財、衣食住や風俗慣習等の民俗文化財、
遺跡や名勝地等の記念物などに分類されている。
○ このうち、道内におけるアイヌの文化財は、
国の指定となっているものが12件、
道の指定は6件、市町村の指定は39件となっており、
これらの指定文化財のほか
その地域の風土や住民の生活・生業により形成された
独特な景観である重要文化的景観等の5件を加え、
62件が文化財としての指定や選定等を受けているところ。
○ これら指定や選定を受けている文化財については、
文化財保護法等の規則に応じて、
毎年、状態の確認等を行いながら、
展示による公開や調査研究に活用されているところ。
○ また、文化財の指定等を受けていない
美術品、工芸品などについても、
道内各地域の博物館、美術館、資料館等で
展示・保存されているものや、個人が所蔵しているものがある。
② アイヌの文化財等の価値基準について
では、その文化財等の価値基準について伺います。
先日、私のところに先月の前日委員会での質問内容を知り、問い合わせが寄せられました。それは屈斜路湖畔の宿泊施設に併設された建物内に巨大な木彫品が収蔵されているとのことでありました。それは一枚が7m×1.5m程の大きさで、12枚によって展開・構成され、一枚一枚にアイヌの人たちの生活の様子をつぶさに表現されているものであるとのことでした。早速、文化庁の方に調べて戴いたところ、それは、江戸から明治時代にかけて活躍され「アイヌ熊送之図」(函館中央図書館所蔵)などの代表作を持つアイヌ絵師の平山屏山(ひらやまびょうざん)が描いたアイヌ風俗画を模写木彫し、残されているものであることが判りました。
送っていただいた写真を見る限りではありますが、圧倒される迫力と仔細にアイヌの生活や習慣を表現したこの作品は、素人目で見ても素晴らしいものであると想像することができました。
アイヌの人たちの生活や習慣は、明治以降急速に和人の生活様式が普及した中で、その多くが失われてしまったものの、いまだ各地の資料館や民間に保管されていたり、更には未発掘・認知されていない品物が存在すると推定できます。
既に世に出ているものも含めて、これらの価値基準はどのようになっているのでしょうか、教えて下さい。
【答弁】
文化財の基準についてでありますが
〇 文化財保護法では、文化財の分類毎に指定の基準が定まっており、
例えば、有形文化財のうち、絵画や彫刻、工芸品などは
歴史上又は芸術上の価値が高いことが必要であり、
考古資料や歴史資料などの場合は
学術的な価値が高いことが必要となっている。
○ また、演劇や音楽などの無形文化財については、
歴史上又は芸術上の価値が高いこととされており、
民俗文化財は、衣服や器具など、当時のくらしの理解のため、
欠くことのできないものであるかどうかなどが求められ、
このような視点から、文化財としての価値、重要度について、
国や道、市町村において、判定されているところ。
〇 また、「伝世品」と呼ばれる、
古くからの生活用具等は、
文化財としての位置づけられているものがあるが、
明治期後半以降には、これら古い品々の複製品や、
新たな創作品が生まれており、
これらは、文化財とは別に、現代的な作品と位置づけられている。
③ アイヌ文化財の作者について
そこでアイヌ文化財等の作者について伺います。
これらの出処については、民間伝承によるものが多く、世に認められた作者は限られていると聞いています。
既にイギリスやスコットランド、ドイツなど海外での収蔵品も明らかとなっていて、国内ともなればその数はかなりの数にのぼるものと推定できます。
作品や作者によっては、新たに才能が世に認められて経済価値を伴うものも出てくるに違いありません。
これまでの名匠作者は勿論のこと、現代の名工、そしてこれからの作者育成についても必要な取り組みだと言えるのではないでしょうか。
どのような方々がいらっしゃるのか教えて下さい。
【答弁】
工芸品などの作者についてでありますが
〇 アイヌの民俗文化財は、暮らしや儀式のために作られ、
用いられたものが、中心であるため、
一部を除いては、作者の名はわからないものが多く、
幕末や明治の時代の記録のなかに、
いにしえの名匠と言われるような方について、
幾人かの名前を確認できる程度である。
〇 現在の状況について、
北海道アイヌ協会では、木彫や刺繍等の伝統工芸の分野で
優秀な技術を有する方に、優秀工芸師の認証を与える制度を作り伝承者の育成に努めており、
これまで、22名のアイヌの方々が、優秀工芸師の認定を受け、
伝承者として製作活動に従事している。
〇 また、美術工芸品など現代的作品についても、
阿寒や平取などの地域で、優れた技術を持った方々が、
装飾品、日用品などの作成に従事している。
いま教えていただいた中で、既に名匠として認められている方々についてはそのままに、現代において活動されている中で、その優れた技術や感性を認められつつある方や、その師の下で修業を積まれている方などを応援できる仕組みなどがあれば良いと思うのです。何もアイヌ文化は過去のものではありません。今も脈々とつながる英知として、その魅力をあらゆる機会を通じて発信できるものであるのです。2020年に向けて国がその気になっているうちに、道もその働き掛けをサポートしていくことが必要です。
④ アイヌ文化等の道独自の発信について
では、アイヌ文化等の道独自の発信について伺います。
先ほど申し上げた屈斜路の件については、文化庁が4~5月に現地確認の検討をしていただけるとお聞きしていますが、これらの情報発信や資料整理については、新たな価値を創造することも可能である一方で、流失や喪失する可能性も同時に発生します。保全と並んで更なる調査も必要であると考えます。
例えば、「木彫りの熊」や「アイヌ紋様」は北海道の代名詞の一つでもあります。しかし、これらは文化財とはなり得ないものとされていますが、扱い方によっては北海道をアピールできる格好のアイテムであることは確かです。
文化財とは一線を画しながらも、観光振興にもつながる経済部との横断的な道独自の取組みとして、北海道の古くからの自然や在り様を表現したもの、いわばアートや民芸を活用したアイヌ文化の発信の手段として活用することも可能です。
このような活動もキャンペーンの一環になり得ると考えますが、国に働き掛けながら、アイヌ文化振興研究推進機構などと協力して取り組むべきだと考えますが如何ですか。お伺いします。
【答弁】
アイヌ文化の発信についてでありますが
○ アイヌ語のあいさつである「イランカラプテ」を
おもてなしの言葉として普及させる
イランカラプテ・キャンペーンの一環として
このキャンペーンに参画する関係機関が協力して、
道庁本庁舎1階ロビーをはじめ、
新千歳空港など道内の各空港における
伝統的な衣装などの工芸品や札幌地下歩行空間における
アイヌ文様のタペストリーなどの展示のほか、
札幌駅における木彫のイランカラプテ像の設置など、
公共施設において工芸品やアートを活用した
アイヌ文化の発信を行ってきたところ。
〇 道としては、今後とも、多くの方々に
アイヌ文化の理解を深めていただけるよう、
イランカラプテ・キャンペーン推進協議会メンバーである
国やアイヌ文化財団、北海道観光振興機構などと
連携して、美術工芸品等を活用した
アイヌ文化普及、PRについて検討してまいりたい
⑤ 「イランカラプテ・キャンペーン」の新たな展開について
次に、イランカラプテ・キャンペーンの新たな展開について伺います。
先月の前日委員会でも報告があったように、「イランカラプテ・キャンペーン」が道民に認知されているのが33.6%と非常に低く、全国と比較してもさほど変わらない状況となっています。
さまざまな事情があることとは思いますが、北海道ならではの魅力を発信しようとする私たちが、この有り様であっては先が思いやられます。
よって、それを改善するためには、これまでのキャンペーンに加えて「民族共生の象徴となる空間」を含めた各地の資料館やイオル地域とのネットワークを構築して、いわば「アイヌ文化の魅力堪能発信ルート」のような開発が可能ではありませんか?
なかなか判りにくい地域毎の違いや、遺したい文化として魅力を磨き上げて、道民の皆さんは基より、北海道にお越しいただいた皆さまに提案することにより、旅行者一人ひとりが、アイヌ文化や北海道に何らかの価値を見出していただくことが可能です。
更に、道民の皆さん、特に子どもたちに、このキャンペーンをより浸透させることを通じて、北海道の強みとして、身近にあるアイヌ文化に親しみを感じることが出来るように意識を醸成させていかなければなりません。
このような新たな視点で「イランカラプテ・キャンペーン」に取り組む考えがあるのか伺います。
【答弁】
文化発信の新たな取組についてでありますが
〇 イランカラプテ・キャンペーンは、
「イランカラプテ」という言葉を切り口として、
アイヌ文化に対する理解をより深めてもらうものであり、
道としては、今後とも、このキャンペーンの趣旨に
賛同していただくサポーターの協力を得ながら、
子どもたちを含め道民の方々に
アイヌ文化に関する理解やキャンペーンの認知度が
より一層高まるよう、キャンペーンの今後の取組や進め方について
国や関係機関等と協議し取り組んでまいる考え。
○ 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせて
開設される「民族共生の象徴となる空間」の
中核となる国立のアイヌ文化博物館では、
国内外の博物館や研究機関、伝承活動を行う団体の協力を得ながら、
アイヌの歴史や文化に関する正しい知識を提供するため、
広報普及活動が充実される計画となっている。
〇 また、白老はじめ平取、阿寒など地域の違いによる
多様性を重視する考えの下、
象徴空間と道内のアイヌ文化伝承活動等が
盛んな地域との広域連携に向けた検討が今後、進められる予定。
○ 道としては、こうした取組を踏まえ、
北海道アイヌ協会や関係市町村と連携し
イランカラプテキャンペーンの定着を図るとともに
道内各地の特色あるアイヌ文化がより一層発信されるよう
取り組んでまいる。
いまのご答弁からは、国が、関係団体が、道が、とそれぞれの立場で違った目的であることをどうしても感じてしまうのです。
このキャンペーンの先にある、アイヌ文化を「北海道の強み」として関心を持っていただき、多くの方に北海道へお越しいただくことができるようにしなければならない切迫感のようなものを感じることができないのです。
象徴空間に100万人を、更にそれを継続させる。外国人観光客300万人を達成させる、それらは人口減少に苦しむ私たちにとって、元気の源になり得ると信じるからこそ必死になって取り組まなければならない課題に違いないと思うのです。
単に、国が唱えたお題目に取り組んでいるのとは大きく違うのだと思うのです。
新たな視点にたって、その効果(認知度)の向上に務めていただきたいと要望しておきます。
⑥ 象徴空間への年間来場者100万人の達成へ向けて
では最後に、象徴空間への来場者数について伺います。
2016年、今週末には北海道新幹線の開業が、2018年には北海道150年事業が、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが予定されています。
また、同じ年には、白老町に象徴空間が開設することになっており、昨年、国のアイヌ政策推進会議において、菅官房長官から、年間来場者100万人を目標とする旨の発言がありました。
ところが、100万人と一言でいっても、そのハードルはかなり高いものであると思います。
先月の前日委員会で質問した際にも触れましたが、行政として人集めは、一番苦手な組み立てになると容易に想像できます。
設置したから来ていただけるというものではなく、仕掛け次第でいくらでも変わってしまうものであるし、当初は良かったとしても、時が経過する中では、より一層の努力を積み重ねなければ、その維持もままならないものです。
我々は、その実例を、去る道外視察の長崎グラバー園で知るところであり、その回復へ向けた取組と結果についてのお話しに、私たちは非常に感心をさせられたところでもあるのです。
その森脇営業部長からお聞きした具体的なお話は、民間企業では至極当然な戦術の一つですが、一方で行政組織においてはスムースに進まないことばかりとなってしまうのです。私たちには、そんな当たり前な努力を一つ一つ積み重ねる覚悟が必要となるのです。
まずは北海道として、これを実現させていくには、この機を活かすとともに、北海道博物館等におけるアイヌ文化の魅力の活用や、象徴空間を核とするネットワーク、「イランカラプテ・キャンペーン」等の手段を有効に活用し、道内外へ強くPRする必要があると思います。
北海道150年事業を良いキッカケとして、様々な仕掛けが必要になるに違いありません。東京オリンピック・パラリンピックが良いキッカケになることは明白ですが、むしろ、その後を見据えた方策を練り込んでおく必要があります。
では、最後に、これらの機会を通して、北海道の魅力の発信と、象徴空間への年間来場者100万人の達成と維持へ向けた決意を部長に伺います。
【答弁】
象徴空間のPRなどについてでありますが
○ 道では、今週末の26日に予定されている
北海道新幹線の開業に当たって、
当日の歓迎イベントにおいて、
アイヌの人たちによる古式舞踊を披露するほか、
新函館北斗駅には、アイヌの人たちの伝統的な衣装や
昔の暮らしを紹介するコーナーを設置している。
○ 空港の関係では、新千歳空港をはじめ、
函館空港や釧路空港において、
民族衣装や伝統工芸品などの展示を行っており、
さらに、現在、帯広空港においても
新たに展示コーナーの設置を進め、
今月中の完成を予定しているところ。
○ また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの
開会式等において、アイヌ文化を紹介していただけるよう
現在、国や関係機関に要請しているところであり、
この大会を通じて 国内外の方々に、アイヌ文化について、
興味や関心を持っていただけるよう積極的に取り組む考え。
〇 さらに、象徴空間の整備に向け、
多くの来訪者がリピーターとなっていただけるような
魅力ある施設となるよう、その充実について、
国に必要な意見を申し上げていくとともに、
北海道博物館をはじめとする道内の博物館等とのネットワークや
イランカラプテキャンペーンなどを活用しながら
象徴空間のPRをするなどして、
年間来場者100万人を目指す象徴空間の開設効果を最大限生かし、
各地のアイヌ文化振興や観光振興にもつなげることができるよう、
国や関係団体とともに、今後、より一層取り組んでまいる考え。
年間来場者100万人の達成と、その維持についての取組みは、道を挙げて取り組まなければならない課題であると認識しています。
大きく高い目標値ではありますが、北海道が輝き続けるためには、余りに必要な設定でしかないと考えているからです。
本件については、引き続き取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
これで質問を終わりたいと思います。 ありがとうございました。