
一 人手不足について
(一) 地域における人手不足について
北海道労働局が4月に公表した本道の雇用・失業情勢によると、平成27年度の有効求人倍率は0.96倍と、前年度を0.1ポイント上回り、統計開始以来最も高い水準となったほか、平成28年3月の高校卒業者の就職内定率が3月末時点で97.9%と、平成4年3月末卒業者以来の高水準など、道内の雇用環境は改善が続いているとのことであります。
一方、地域のハローワーク別の有効求人倍率は、最も高い岩内の1.62倍から、最も低い札幌東や岩見沢の0.83倍と、地域によって大きな幅があり、状況がかなり異なっております。
道は、こうした地域の人手不足についてどのように認識しているのか、伺います。
【答弁】
地域における人手不足についてでありますが
〇有効求人倍率の最も高いハローワーク岩内は、
管内に道内有数の観光地であるニセコ地区を抱えており、
職種別の有効求人倍率では、接客・給仕が5倍を超えているなど、
観光分野における人手不足が顕著になっていることから、
倍率を大きく引き上げているところ。
〇一方、ハローワーク札幌東やハローワーク岩見沢においては、
事務、清掃など有効求人倍率が1倍を大きく下回る職種で
求職者数が比較的多いことから、
有効求人倍率が低くなっているもの。
〇このように、地域の産業構造や
求職者の希望する職種の偏りなどにより、
道内各地の有効求人倍率に差が生じており、
地域によって人手不足の状況は異なるものと考えている。
(二) 人手不足分野における取組について
地域における人手不足と同時に、職種別にも有効求人倍率に大きな乖離があり、とりわけ、地域の産業を支える建設業の担い手、今後ますます需要が高まる介護士及び保育士など福祉分野や、急増する訪日外国人の受入に向けた接客サービス職や自動車運転手など観光分野において、有効求人倍率が1倍を超え、人手不足が顕在化しております。
道は、こうした分野の人手不足についてどのように認識し、どう対応しているのか、伺います。
【答弁】
人手不足分野への対応などについてでありますが
〇本道においては、建設や福祉をはじめとする幅広い分野で
人手不足の状況が見られ、
こうした分野においては、就業環境や処遇に関する問題や、
求職者の職業理解が十分進んでいないなどの
課題があるものと認識。
〇このため、道では、人材の確保や定着に向け、
分野ごとに、関係団体や国の関係機関などと協議会を設置し、
課題の共有化や対応策の検討を行うとともに、
昨年9月には、すべての振興局に、事業者からの相談に対応する
「北海道就業サポートセンター」を設置するなど、
人手不足分野における人材の確保に取り組んでいるところ。
(三) 戦略産業雇用創造プロジェクトの雇用目標について
人手不足問題への対応については、個別の求人、求職のマッチングによる就業支援のほか、労働条件や雇用形態において、求職者の求める雇用の場づくりが必要であります。
道は、平成25年からの3年間、戦略産業雇用創造プロジェクトにより、食やものづくり産業分野を対象とした産業振興との一体的な取組による雇用の創出を行ってきておりますが、この取組による成果がどうだったのか。
また、今年度から新たに3年間、これまでの食とものづくり産業分野に加え、健康・長寿産業分野を加えて、新たな事業構想に取り組んでおりますが、この新たな取組の雇用創出目標についておききします。
【答弁】
戦略産業雇用創造プロジェクトについてでありますが
〇昨年度までの事業構想のもとで、
雇用の裾野が広い自動車を中心としたものづくり産業分野と
本道の特性・優位性を活かした食関連産業分野において、
産業振興と雇用対策の一体的な取組を展開した結果、
現在、雇用創出数を取りまとめているところでありますが、
3年間で目標としていた1,892名を上回り、
2,000名を超える見込み。
〇新たな事業構想では、医療関連企業の本道進出や、
道内の食関連企業などに参入の動きが見られ、
今後成長が見込まれる健康長寿産業分野を
これまでの2分野に加えることとし、
平成30年度までの3年間の雇用創出目標を
前構想より約800名多い2,710名としたところ。
(四) 学生のU・Iターン推進について
全国に比べ少子高齢化、人口減少が速いペースで進む本道にとっては、道外に流出した人材の呼び戻しや、北海道に新たな人材を呼び込むU・Iターンを積極的に進めなければならないと考えております。
特に、進学を機に道内から首都圏など道外の大学に入学した学生などに対して、積極的に道内の企業が情報提供を行い、マッチングの機会を作らなければ、学生のU・Iターンに結びつかないと考えますが、道は今後どのように進めていく考えなのか、伺う。
【答弁】
学生のU・Iターン推進についてでありますが
〇 近年の人口減少に加え、若年層が首都圏などに流出する中で、
道内各地で人材不足が課題となっており、
地域の産業を担う学生などの呼び戻しや呼び込みを
さらに進めることは、地域や経済の活性化を図る上で
重要な取組と認識。
〇 このため、道では、これまで、
インターネットを活用した求人・求職情報の提供や、
東京都内における合同企業説明会の開催に加え、
首都圏等の大学が開催するU・Iターン就職相談会に参加し、
道内の求人情報を提供するなどして、
道外からの人材誘致に取り組んできたところ。
〇 今後は、このような取組が実際に就職につながるよう
インターンシップの受入企業の開拓や
道外大学との連携・協力を進めるなど、
北海道労働局や市町村、関係団体と連携を図りながら、
学生のU・Iターンの推進に取り組んでまいる。
(五) 北海道働き方改革包括支援センターについて
1 働き方改革を進める観点について
国においては、「ニッポン一億総活躍プラン」が6月2日に閣議決定され、今後、具体的な取組が進められていくものと受け止めております。
プランは、少子高齢化の問題に対して、成長と分配の好循環のメカニズムを生むため、一億総活躍社会を実現しようとするものであり、その実現に向けた横断的な課題への対応として、働き方改革の取組を進めることとしております。
道はこの度、「北海道働き方改革包括支援センター」を設置して、企業の就業環境に関する相談や、働き方改革の普及啓発などを進めることとしているところでありますが、こうした働き方改革による長時間労働の是正など労働環境の改善は、人手不足に陥っている企業にとって、人材確保に結びつく重要な取組になるものと考えられます。
働き方改革は大変幅の広い取組であり、例えば仕事と子育てや介護の両立支援、長時間労働の是正、非正規雇用の待遇改善など、様々な課題への対応が必要となりますが、短期的な、あるいは中長期的な課題、また優先して取り組むべき課題があり、対応についても代わってくるものと考えております。
どういった観点を重視して働き方改革を進めていく考えなのか、伺います。
【答弁】
働き方改革についてでありますが
〇 道としては、北海道の活力と成長力を高め、
持続可能な社会をつくるといった考えのもと
仕事と生活の調和の実現とともに、経済の好循環をさらに
進めていくことを目的として、
企業の就業環境の改善を支援していくこととしている。
〇設置を予定している「働き方改革包括支援センター」では、
短期的には、働き方改革の必要性についての普及啓発や、
専門家の派遣を含め企業からの相談に一元的に対応するほか、
一部の業種においては、長時間労働が敬遠され、
人材不足が深刻化していることから、
業界と連携して改革プランの作成を進めていくこととしており、
中長期的には、モデルとなる改革プランを
全道に普及することにより、働き方改革の浸透を図っていく考え。
2 女性などへの取組について
道においては、これまでも仕事と家庭の両立支援や、企業における職場定着の支援、女性や若者の就業支援などの取組を行ってきておりますが、女性の就業拡大、若者の離職者の低減につながっているとは言えない現状にあると受け止めております。
これまでの取組をどのように評価し、今回の働き方改革包括支援センターの取組につなげていく考えなのか、伺います。
【答弁】
女性などへの取組についてでありますが
〇道では、女性や若者などの安定した就業を促進するため、
育児などのために離職した女 性の再就職に向けた
カウンセリングを実施するとともに、若者の早期離職防止に向けては、
新たに、地元企業を理解するための説明会や、
就職後の定着研修を実施しているところ。
〇女性や若者が安定した職を得て、安心して働き続けるためには、
こうした取組に加え、仕事と家庭の両立を図りながら、
働き続けることのできる職場環境づくりが不可欠であるが、
道内の中小企業の多くが厳しい経営状況にあり、
就業環境の改善に取り組むことが容易ではない状況にあるものと承知。
〇こうしたことから、支援センターにおいては、
これまでの企業に対する労務管理面での助言や指導に加え、
新たに、経営改善も含めた改革プランを提案するなどして、
就業環境の改善に向けた取組を促進することとしており、
働き方改革を通じた企業の人材確保につなげていく考え。
3 札幌市との連携について
道内企業の多くは札幌市に集中しており、また、札幌市が他地域に比べて低い出生率にあることなどからも、札幌在住の方々の働き方改革に取り組むことは、道全体の取組の中でも特に重要な取組になると考えております。
今後、道では札幌市とどのように連携を図って取組を進めていくのか、伺います。
【答弁】
札幌市との連携についてでありますが
○ 札幌市には、道内事業所の約3割が立地しており、
また、道内各地に支店等を有する企業が多いことから、
市内の企業に対する働きかけを進めることは、
本道の働き方改革を進める上で効果的であり、
札幌市と連携した取組が重要と考えている。
〇道としては、働き方改革の意識醸成に向けた
シンポジウムやセミナーを協力して開催するほか、
子育て支援の一環として、
札幌市がワーク・ライフ・バランスに取り組む企業の認証事業を
実施するにあたって、支援センターの活用を企業に促すなど、
札幌市と連携することにより、
働き方改革の取組を加速してまいる考え。
4 企業の取組について
中小企業においては、人手不足の中、長時間労働などの働き方を改善したくても、経営とのバランス上難しい面もあると考えております。働き方改革は、従業員のみならず、企業にとってもメリットのある取組にしていかなくてはならないと考えますが、道では、こうした点を踏まえ、どのように企業に取組を促していくのか、伺います。
【答弁】
企業の取組の促進についてでありますが
〇道内の中小企業の多くは、厳しい経営状況にあり、
全国と比較して、年間総労働時間が長く、年次有給休暇の
取得率が低いなど厳しい雇用環境にあることから、若年者などの
採用が難しく、また、新規学卒者の職場定着率が低いなど、
必要な人材の確保に支障をきたしているものと承知。
〇人手不足を解消するためには、企業の経営トップの方々に、
働き方改革を通じた就業環境改善の必要性を
理解していただくことが重要であることから、
道としては、経営者などを対象とするシンポジウムやセミナーを
開催するとともに、公的支援策等の情報提供や
専門家の派遣による総合的な改革プランの提案など、
支援センターの機能を活用して、多くの道内企業が
働き方改革に取り組むことができるよう努めてまいる考え。
5 今後の取組について
働き方改革の推進により、仕事をしながら子どもを生み育てたい方々の希望の実現や人手不足に悩む企業の担い手対策など、様々な効果が期待されます。
今後、どのように働き方改革包括支援センターを運営し、働き方改革に関する取組を全道に拡げていくのか、伺います。
【答弁】
支援センターについてでありますが
〇支援センターの機能を活用することによって、
多くの企業が働き方改革に取り組み、長時間労働の是正や
年次有給休暇の取得促進などの就業環境の改善が進むことが重要と認識。
〇このため、道では、人手不足が深刻な業界と連携して
業種別に改革のモデルプランを作成し、
業界団体への浸透を図るほか、
今後、すべての振興局に設置を予定している、商工団体や
労働団体などで構成される協議会を通じて、
地域の企業への普及を図ることとしており、
道内各地で、多くの企業が働き方改革に取り組み、
ワーク・ライフ・バランスの実現や企業に必要な人材の確保が
図られるよう努めてまいる考え。
(六) 道の人材確保に対する考えについて
地域の産業が人手不足による人材確保難に陥っていることは、人口減少及び少子高齢化のペースが全国に比べ加速的に進む道内、とりわけ人口流出が進む都市部以外の地域において、地域の働き手の減少を助長し、地域産業の衰退に拍車がかかるなど、重大な問題であります。
道は、今年3月に第4期北海道雇用創出基本計画を策定し、4年間で9万人の雇用創出や、毎年度の就業率の上昇を目標として掲げておりますが、この基本計画の下、地域の産業の人手不足問題をどう解消していく考えなのか、伺います。
【答弁】
人材確保についてでありますが
〇人口減少社会において、地域経済の活性化を図るためには、
良質で安定的な雇用の場づくりや、
道外からの人材の誘致などにより、
多様な働き手の就業の促進を図っていくことが重要と認識。
〇このため、道としては、「第4期北海道雇用創出基本計画」と、
これに基づき毎年度策定する推進計画に沿って、
雇用創出につながる地域産業の振興はもとより、
雇用のミスマッチ解消に向けた、若者、女性、高齢者などの
就業機会の拡大、働きやすい職場環境の整備、
U・Iターンによる人材の誘致など、
各般の事業を着実に実施することにより、
地域産業の人手不足の解消につなげてまいる考え。