
平成29年北海道議会第1回定例会が、2月24日(金)から開会しております。
今回の定例会では、3月13日から始まった予算特別委員会で質問の機会を得ております。
昨日は、建設部に、①「日本海沿岸の津波浸水想定について」を質問させていただきました。
明日は、教育委員会に、②「特別支援学校の目指す姿について」と、③「子どもの生活習慣の定着について」を質問させていただきます。
順次、悠和会などの道政報告会や朝の街頭演説などを通じて、皆様に報告させていただきたいと考えています。
何卒よろしくお願いいたします。
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一 日本海沿岸の津波浸水想定について
(一) 浸水想定を示すに至った経緯などについて
道は、先日、日本海沿岸の津波浸水想定を明らかにいたしました。
今後、津波による浸水が想定される各市町村では、ハザードマップの作成をはじめとして様々な対応が求められますが、市町村では、既に、道が平成22年3月に明らかにした津波浸水予測をもとに、ハザードマップの作成などの対応がなされており、今また、何故対応しなければならないのか、といった思いもあると考えられます。
新たに津波浸水想定を示すに至った経緯、また、これまでの浸水予測と、津波発生の仕組み、規模がどのように違っているのか、伺います。
<答弁>
浸水想定の経緯などについてでありますが
○ 道は、地震防災対策特別措置法に基づき、
北海道南西沖地震津波など過去に発生した津波や
当時の国の調査研究成果を基に設定した
津波断層モデルによる津波浸水予測を
平成22年3月に公表したところ。
〇 東日本大震災を受け、平成23年12月に
「津波防災地域づくりに関する法律」が施行され、
国は、基礎調査や津波断層モデル等の情報提供を行い、
これを踏まえて、道は改めて津波浸水想定を設定することとなり、
国が平成26年8月に日本海の津波断層モデルを
公表したことを受け、検討を進め、
この度、津波浸水想定を設定し、公表したところ。
○ 今回公表した津波は、断層運動により、海底が隆起もしくは沈降し、
これに伴って海面が変動し、大きな波が伝播して発生するもの。
○ これまでの津波浸水予測の津波も、
同様の仕組みにより発生するものであり、
新たな知見による、津波断層モデルの配置などの設定の違いにより、
前回に比べ津波高が高く、浸水域も約2倍となったところ。
(二) 断層モデルについて
津波防災地域づくり法に基づく、推進に関する指針では、浸水想定の設定は、基礎調査の結果を踏まえ、最大クラスの津波・L2津波を想定して、浸水区域、水深を設定する、とした上で、L2津波の断層モデルは国において検討し都道府県に示す、としております。
この度の道の浸水想定の断層モデルは、国が公表したモデルに、道が新たに4つの視点を加えておりますが、何故、そのような扱いとしたのか、伺います。
<答弁>
断層モデルについてでありますが
○ 国が公表した津波断層モデルは、
沿岸付近の短い断層を検討対象としていなかったが、
これらの中には陸域に近い位置にあるものもあり、
最大クラスの津波を起こす可能性があることや
津波痕跡である津波堆積物が新たに確認されたこと等から
道として、新たな視点を加え検討を実施したもの。
〇 これらを踏まえ、
北海道防災会議 地震火山対策部会 地震専門委員会において、
国が公表した津波断層モデルを基に、
津波浸水想定について審議したところであり
この審議結果および、国の助言をもとに、
道として、この度、津波断層モデルを設定するとともに
津波浸水想定を設定し公表したもの。
(三) 影響開始時間ゼロについて
津波浸水想定では、立っていられなくなる、水深20cmの津波が達する時間が0分とされるケースが見られます。この想定は、L2津波が発生するとして組み立てられており、なんとしても人命を守る、ためには、より高いところへ避難しなければなりませんが、避難する間もなく津波に襲われる、と示していることになります。
浸水想定を明らかにした道として、こうした状況にどう対応する考えなのか、伺います。
<答弁>
影響開始時間についてでありますが
○ 今回、公表した津波浸水想定では、
想定した断層が陸地に近いことなどにより、
海岸線において避難行動が難しくなるとされる、
影響開始時間がゼロ分となった地域があるところ。
○ 実際にはどのような規模などの津波が来るか、わからないことから、
地震を感じたらすぐに高いところに
避難して頂くことが重要であると考えているところ。
○ 最大クラスの津波に対しては、迅速な避難が重要であり、
避難路や津波避難タワーや津波避難ビルなどの避難場所の整備
による対策とともに、地域における連携した避難の仕組み作り等の
対策が考えられるところ。
○ 道としては、市町村で必要となる津波避難計画の作成等、
様々な津波防災に関する取り組みを支援してまいる。
(四) 津波災害計画区域の指定について
道は、今後、津波災害警戒区域の指定をすることになりますが、どのように進めていくのか、スケジュールを含め、伺います。
<答弁>
津波災害警戒区域の指定についてでありますが
〇 「津波防災地域づくりに関する法律」では、都道府県知事は、
警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域を、
津波災害警戒区域として、
また、開発行為及び建築を制限すべき
土地の区域を津波災害特別警戒区域として指定することができ、
さらに津波災害特別警戒区域では、市町村が条例で定め、
住宅等の規制を追加することができるとされているところ。
○ 道では現在、関係市町村への説明等を行っており、
市町村と協議をさらに進め、
順次、津波災害警戒区域を指定する考えであり、
早期の指定に向けて、
市町村の理解が得られるよう取り組むとともに、
津波災害特別警戒区域については、
今後、市町村の意向を確認するなどして取り扱って参る考え。
(五) 推進計画について
津波防災地域づくり法では、市町村は津波防災地域づくりを総合的に推進するための計画を作成することができる、とされ、この計画には、基本的な方針、浸水想定区域における土地利用及び警戒避難体制の整備に関する事項などを定めるよう、求められております。推進計画は、今年の2月9日現在、南海トラフ巨大地震による影響を被る静岡県焼津市など7つの自治体で作成されているに止まっております。
この度の日本海沿岸の津波浸水想定の公表を受けて、各市町村では、推進計画の作成にどのように取り組もうとしているのか、また、道としてどう対応する考えなのか、伺います。
<答弁>
推進計画についてでありますが
○ 推進計画は、国が定めた基本指針、および津波浸水想定を踏まえ、
市町村が津波防災地域づくりを総合的に推進するために、
警戒避難体制の整備や、
迅速かつ円滑な避難のための避難路や避難場所の整備、
津波から生命や財産などを守る津波防護施設の整備など、
様々な主体が実施するハード・ソフト施策を総合的に組み合わせた
ものとなっているところ。
○ 現在、道では、関係市町村へ推進計画についての説明、周知を行い
併せて、その作成の意向についても伺っているところであり、
それぞれの市町村において、作成の方針が出された際には、
市町村が設置することができる協議会などにおいて
関係機関と連携し、支援に努めて参る考え。
(六) L1津波への対応について
1 L1津波の津波高について
道は、災害に強いまちづくりに向けた取組として、L2津波に比べ発生頻度の高い津波・L1津波に対して、人命の保護に加え、住民財産の保護、経済活動の安定化などを目的に、海岸保全施設などの整備を進める、としております。
L1津波に対応して海岸保全施設などの整備を進めるにあたって、施設の高さの基準となる津波高についてどのように設定するのか、伺います。
<答弁>
施設整備の基準となる津波の水位、
いわゆる設計津波水位についてでありますが、
○ 道では、平成26年8月から国が示した津波断層モデルによる
L2津波の検討を始めており、設計津波水位の設定にあたっては、
この過程における、津波断層モデルや
津波シミュレーションなどの資料を活用する必要があります。
○ こうしたことから27年6月に学識経験者などによる
「北海道日本海沿岸の設計津波水位検討委員会」を設け
これまで、この委員会を2回開催し、今月末には、
専門的見地から設計津波水位の案をいただく予定となっている。
○ 新年度には、この案に基づき、関係部局により調整した上で、
地区海岸ごとの設計津波水位として、
設定・公表するととともに、背後地への影響などもふくめ、
市町村や他の施設管理者に対し、丁寧に説明する考え。
2 施設整備について
道が言うとおり、道民の生命・財産を守り、経済活動を安定的に継続できるよう、災害に備えなければならず、海岸保全施設などの整備は、早急に進める必要があります。道民は、津波がどのように襲ってくるのか、ということ以上に、津波にどう備えるのか、について関心があります。
海岸保全施設などの整備をどのように進めていく考えなのか、伺います。
<答弁>
海岸保全施設の整備についてでありますが、
○ 道では、これまで高潮や侵食の被害を受けた箇所などについて、
堤防や護岸などの施設整備を重点的に
行ってきたところであるが、
今後においては、
現在検討中の設計津波水位と既設堤防等の高さとの比較を行い、
背後地の利用状況等も考慮した上で、
堤防の嵩上げや護岸の新設など、津波対策が
必要となる区域を特定し、こうした区域を含め
関係する市町村などと十分連携を図るとともに、
地域の実情も踏まえ、海岸保全施設の整備などについて、
着実な推進に努めてまいる考え。
(七) 太平洋沿岸の津波浸水想定について
1 道の津波浸水予測について
道は、平成24年6月に、太平洋沿岸の津波浸水予測を公表しておりますが、太平洋沿岸の国の断層モデルは、来年度明らかにされるとのことであり、道の浸水予測は道が独自に検討した結果ということになります。
道の浸水予測は、どのように検討されたのか、伺います。
<答弁>
道の津波浸水予測についてでありますが、
○ 平成23年3月に発生した東日本大震災が、
想定を上回る巨大地震だったことを踏まえ、
同年6月に、北海道防災会議に
有識者によるワーキンググループを設置し、
平成17年に公表した、太平洋沿岸東部・中部における
津波浸水予測、及び、
平成18年に公表した、太平洋沿岸西部における
津波浸水予測を見直しすることとしたもの。
○ この検討にあたっては、
沿岸で発見された過去の津波の痕跡である
津波堆積物の最新データなどを基に津波断層モデルを設定し、
当時、想定し得る最大クラスの津波による
浸水予測図として、平成24年6月に公表したもの。
2 国の断層モデルへの対応について
国の断層モデルが明らかにされた場合、どう対応する考えなのか、伺います。
<答弁>
国の断層モデルへの対応についてでありますが
○ 国は平成27年から
「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」
を設置し、現在、津波断層モデルの検討を続けているところ。
○ 道は、新年度以降予定されている
国による津波断層モデルの公表後、
津波防災地域づくりに関する法律に基づき
太平洋沿岸の津波浸水想定について、
日本海沿岸と同様に北海道防災会議 地震火山対策部会
地震専門委員会において、検討してまいる考え。
(八) 災害に強いまちづくりについて
災害は、時と所を選ばず私たちを襲い、昨日までの生活を根こそぎひっくり返してしまいます。
平成25年12月に決定された、国土強靱化政策大綱では、「非常時のみならず平常時にも有効に活用される対策となるよう工夫すること」「既存の社会資本を有効活用することなどにより効率的に施策を推進すること」が国土強靱化を推進する上での方針とされており、社会資本の多面的活用の考え方が示されております。
東日本大震災の被災地では、盛土構造の道路が避難場所となるとともに浸水拡大の防止に寄与したり、道の駅や港湾・空港などが災害対策活動の拠点となっており、当初考えられなかった活用が行われております。こうした多面的な活用をあらかじめ想定して施設整備を進めていくべきであり、そのためには危機管理や福祉・医療などの観点を含めて検討する必要があると考えます。
道が災害に強いまちづくりを進めるにあたって、この社会資本の多面的活用の考え方も踏まえ対応していくべきであります。今後、災害に強いまちづくりに、どのように取り組んでいく考えなのか、伺います。
<答弁>
災害に強いまちづくりについてでありますが
○ 東日本大震災を契機として、これまでの防災計画を見直し、
大規模な災害に備え、様々なハード・ソフトの施策を組み合わせる
「多重防御」による防災対策が求められており、
道におきましては、これまで、釧路市内の道営住宅を
津波発生時の垂直避難のための、緊急避難ビルとする取り組みや、
急傾斜地崩壊防止施設や治山施設の管理用通路を、
避難経路として使用する取り組み、
既設のカーブミラーや道路標識に、海抜表示板を設置する取り組み、
などを実施してきたところ。
○ 道としては、災害時に要援護者も含めた道民の命を守るため、
今後保健福祉部とも情報共有を図り
これらの災害に強いまちづくりに資する取り組みを進めるとともに
避難場所や避難経路としての活用が期待される
高規格幹線道路の整備の推進について
国に対し要望してまいりたい。
【指摘】
只今多くの答弁をいただいたところではありますが、北海道においては近年の南西沖地震や東日本大震災等の経験を通して、今を生きる私たちは、先人たちの教えを掘り起こしつつ、いつかは判らなくとも、いつかは必ずやってくる危機に向けて着実に備えを進め、道民の生命と財産を如何にして守っていくのかを図らなければならないのだということは間違いありません。
しかし、この質問に対して答弁を頂いた内容からは、決して単純ではない地域毎の事情が存在し、市町村と連携を深めながらも国や道が進める推進計画等が思うように進まない現実が垣間見えたと捉えています。
事が起こった後で「道として問題のない対応を取っていた」ことが大切なのではなく、主体が市町村でありながらも、法的に強制できない範囲であってとしても、私たち行政の役割を明確に認識しながら、道民にとって必要な情報の不足のない提供や自治体への助言を必要十分に行う覚悟を以って事に当たっていただきたいと思うのです。
国土強靭化等の取組みは、リスクマネジメントなのであり、強くしなやかな国を、地域をつくっていくことなのでありますから、一義的に事を天秤に掛けて選択を迫ることが大切なのではなく、そうなったとしても私たちの暮らしを経済的に文化的に保つことが出来るように備えることにこそ主眼を置いた準備が何よりも優先されるべきなのだと考えています。
今後、この政策の実行に向けては、幾多の困難が待ち受けることになるかと推察いたしますが、実現すべきは将来未来に渡って子供たちの孫たちの暮らしに必要な備えを、いま生きる私たちが優先順位をつけながらも実現させていくことに違いありません。
地道な努力の積み重ねが続くものと思われますが、めげず怠らず着実に推進していただけますようにお願い申し上げて、質問を終わらせて頂きます。
ありがとうございました。