
この質問は、道が、これまでアイヌ文化振興に取り組んできた中で、主体が誰であると考えているのか、また、その主体の中に含まれているアイヌの人たちの数も多分に漏れず減少を続ける中で、どのようにして、特に道民の元気に直結することのできる文化振興として、道が施策の推進を図っていくのかを議論させていただいたものです。
アイヌの人たちの人口についての「根拠」と「基準」については、これまで明らかになっておらず、北海道アイヌ協会等に委託することによってとりまとめてこられた事実があります。
アイヌ新法の整備が進む最中にあっては、この特定が必須であり、それによる「保護と支援」、そして主体による「文化振興」を実現させなければなりません。
白老町に建設が予定されている「民族共生象徴空間」の完成まで、約3年となっています。
年間100万人来場者数の実現は、胆振地方に留まることなく、全道にその効果を広げることができる秀逸な手段なのだと信じています。
その為に必要な施設群の整備と、惜しみない営業努力の継続が必要です。
以前の質問でも取り上げておりますが、受益者は私たち北海道民なのです。
本件につきまして、引き続き調査と議論を行ってまいります。
よろしくお願いいたします。
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平成29年第一回定例会 環境生活委員会 終日委員会 質問
【人口減少とアイヌ文化振興政策について】
この議論の前提として、日本の人口が、今後50~60年程度留まることなく減少し続けるという予測があることに加えて、北海道の人口減少が全国平均の15年先を走っているという現状を客観的に分析すると、多分に漏れずアイヌの人たちの人口も減ってしまうことは、容易に推定できます。
アイヌの人たちの人口の追跡把握が難しくなっていることは、道も認めているところであり、高齢化や同化が自然な流れで進む中では、決して明確にしないまま先送りして良い課題ではないと考えています。
① アイヌの人たちの調査対象者数の今後の推移について
まず、アイヌの人たちの調査対象者数の今後の推移について伺います。
冒頭で申し上げたように、自然に進む高齢化や同化が流れの中にあって、30・50・100年というスパンでアイヌの人たちの調査対象者数が増加していくとは考えにくいのです。道は、この点についてどう捉えているのか、見解を伺います。
<答弁>
「北海道アイヌ生活実態調査」対象者数の推移についてでありますが
○ 「北海道アイヌ生活実態調査」は、
道内におけるアイヌの人たちの生活実態を把握し、
今後の総合的施策のあり方を検討するための
基礎資料を得ることを目的に、
昭和47年から7年毎に実施してきているもの。
○ この調査の対象者数について、直近の平成25年の調査では、
1万6,786人と、これまでの調査で、
一番少ない対象者数となったところ。
○ 調査対象者数の減少については、調査にご協力いただいている
北海道アイヌ協会の会員数が、高齢化等により減少していることや、
地方在住者の都市部への移転により、追跡把握が難しくなったこと、
また、個人情報保護に関する意識の高まりにより、
調査への協力が得られにくくなったことなどが、
その要因と考えられ、
道としては、今後も、同様の傾向が見込まれるものと考える。
② 名乗り出ないアイヌの人たちについて
アイヌの人たちであることを名乗ることを希望しない方もいらっしゃるとお聞きしておりますが、本人の選択を含めて今後どのように取り扱っていく考えであるのか、見解を伺います。
<答弁>
調査対象者の意識についてでありますが
○ 道が実施している調査では、
アイヌの血を受け継いでいる方であっても、
本人が、調査対象者となることを望まない方は、
対象から除外しているところ。
○ 平成21年7月に内閣官房長官に提出された
「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告書では、
今後のアイヌ政策の基本的考え方として、
憲法13条の「個人の尊重」は基本原理であり、
我が国の法秩序の基礎をなすこと、
アイヌのアイデンティティを持って生きることを選択した場合、
国や他者から妨げられてはならないこと、
さらに、アイヌというアイデンティティを持って生きることを
可能にするような政策を行うことに配慮が必要と
記載されているところ。
○ このため、道としては、アイヌの人たちが、
アイヌというアイデンティティを選択できるよう、
アイヌ協会や関係市町村と連携を図りながら、
民族としての誇りが尊重される社会の実現を目指し、
引き続き、積極的に取り組んでまいる。
③ アイヌの人たちの人口調査方法の確立について
昨年11月の一斉委員会の質問で、アイヌの人たちの調査対象者数について確認させていただいたところ、道による平成25年の実態調査によると16,786人と答弁がありました。
これはどのように集計され、どの範囲で定義付けられているのでしょうか。詳しく教えて下さい。
同時に、国と協議し、調査方法について検討を行うとも答弁いただいているところでありますが、その根拠が確立されていない方法には問題があると考えています。
国に、対象となる方の根拠を明確にするとともに、「調査対象者数」ではなく「人口」としての調査方法の確立することを要望し、早急に検討を始めることを求めます。その見解とそれらのスケジュールを示してください。
<答弁>
アイヌの人たちの生活実態調査の対象者についてでありますが
○ これまで、道が行ってきた調査は、
生活の実態を把握することを目的とし、
地域社会でアイヌの血を受け継いでいると思われる方、
また、婚姻・養子縁組等により、
それらの方と同一の生計を営んでいる方を対象としてきた。
○ 昨年、国から、総合的な先住民族政策の根拠となる
アイヌ新法の検討に資するため、
道が実施している調査の1年前倒しの要請があったことから、
今後、その方法や内容等について、
国をはじめ、アイヌ関係団体などとも
しっかり協議する必要があると考えているところ。
○ また、国は、新年度、独自に全国における調査等を
行う予定であることから、
アイヌであると名乗っていなかった方々も含めた
調査の方法や内容等についても、
国が中心となり、検討いただくよう、求めてまいりたい。
【指摘】
調査方法の「根拠」と「基準」については、この質問についての意見交換の中で様々に議論してきたところでありますが、道が北海道アイヌ協会等に委託して、これまで行ってきた生活実態調査の中で把握されている「調査対象者数」については、その「根拠」も「基準」も明確になっておらず、ある意味においては恣意的なものとなっていることは否定できないのだと考えています。
人口減少の最中に合って、その中で「保護や支援」、そして「文化振興」を法の趣旨の下で行い、広く道民に国民に理解と協力を求めて、その先に果たす「文化振興」の結果として、北海道の強みを活かした施策となりえるのだと思うのです。
それらの基盤となるアイヌの人たちの人口について、明確な「根拠」と「基準」が必要となるのであり、アイヌ文化振興法が国によりなされるものである以上は、道が行ってきた生活実態調査では限りがあると言わざるを得ません。
また、この「根拠」と「基準」を道が定めるものではないことも明らかなのであります。
よって、国に対して、アイヌの人たちの人口の調査方法についての「根拠」と「基準」を定めるように強く要望するように求めていただくように申し上げておきます。
この点については、今後も議論を続けて参りたいと思います。
④ アイヌ文化振興の維持と主体について
ここまでお聞きしてきたようにアイヌの人たちの人口が減少してしまうことを推定した上で、将来のアイヌ文化振興の展開についてお聞きします。
最初に、「アイヌ文化」は、アイヌの人たちが居続けて初めて成り立つものであるのか、アイヌの人たちが減少してしまった後は、日本国民によって維持されるものであるのか、それでも「アイヌ文化」であり得るのか、行きつくところ、アイヌ文化振興の主体は誰になるのでしょうか。
「共生」を掲げる私たちは、主体が共にあるとすることが大切なのであって、それがアイヌの人たちによるものとすると、目指していたはずの「共生」ではなく、「保護や支援」になってしまうのではないかと考えていて、目指していた姿ではなくなってしまうのではないかと危惧しています、これらについての道の見解を伺います。
<答弁>
アイヌ文化の振興についてでありますが
○ 国は、我が国の先住民族であるアイヌの人々の誇りの源泉である
アイヌの伝統及び文化の置かれている状況を踏まえ、
アイヌ文化の振興並びに伝統等に関する国民に対する
知識の普及及び啓発を図るための施策を推進することにより、
アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、
あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的に、
平成9年にアイヌ文化振興法を制定したところ。
○ このアイヌ文化振興法では、国及び地方公共団体は、
アイヌ文化の振興を図るための施策を推進するよう
努めなければならないとされており、
また、施策を実施するにあたっては、アイヌの人々の自発的意思及び
民族としての誇りを尊重するよう配慮することとされているところ。
○ このため、道としては、法の趣旨を踏まえ、国とも連携しながら、
アイヌ文化財団を通じ、アイヌ文化の振興、普及啓発、
並びに国民理解の促進に努めているところであり、
これら施策の推進にあたっては、アイヌの人たちはもとより、
道内外の多くの方々にもご参加をいただき、
多様な文化の発展、民族共生をめざし、
様々な取組を進めているところ。
【指摘】
この質問から、改めて「主体」が国民・道民であることが確認できたと思います。
道におかれましては、この「主体」を置き去りにした文化振興策では、目指す姿を実現できないという点をお忘れにならぬように、道民感情とバランスのとれた施策の推進を実現していただけるように申し添えておきます。
⑤ アイヌ文化振興の目的について
私に言わせれば、これまで質問させていただいたようにアイヌ文化振興は、北海道の元気の為の手段となるのであれば、民族保護や優遇がアイヌ文化振興とセットとなって推進されることに違和感を覚えるのであります。
強調しておきますが、民族保護や優遇をするなという趣旨の質問をしているのではありません。分けて行うべきとの質問をしているのであります。
前回の質問で確認していた「共生」を掲げる私たちは、道民感情をどう捉えているのか、それはバランスがとれているものなのか、道は真摯に向き合わなければならないのだと思います。
私は、アイヌの人たちを見守りつつ、日本国民全員が、特に北海道に住まう私たちが、アイヌ文化振興に力を合わせる姿が必要であると訴えているのであります。
アイヌ文化振興は、活力ある共生社会の実現の為なのであり、「北海道らしさ」や「北海道を強くする」ための手段であると考えておりますが、道としての見解を伺います。
<答弁>
アイヌ文化振興の取組についてでありますが
○ 我が国の先住民族であるアイヌの人たちの
民族としてのアイデンティティの基盤である
アイヌ文化の伝承や振興を図ることは、
アイヌ文化振興法の目的のひとつである
我が国の多様な文化の発展を図る上で、重要な要素と考える。
○ また、アイヌ文化は、白老、平取、阿寒など、
地域によって異なる多様性を有しており、
アイヌ文化の振興を図ることは、アイヌ文化の復興はもとより、
道内各地域の観光振興や地域創生にもつながるものであり、
北海道の多様な魅力を高めていくことに、
大きく貢献するものであると考える。
○ アイヌの人たちの民族としての誇りが尊重されるとともに
全ての道民を対象とした共生社会の実現をめざし、
併せて、本道の活性化を図るためには、
アイヌの人たちの主体的な取組はもとより、
市町村や関係機関などをはじめとする
地域社会全体での取組を進めていくことが必要であることから、
道としては、今後とも、
多くの道民や企業・団体等の皆様のご理解をいただきながら、
アイヌ文化振興をはじめとした様々な取組を積極的に展開してまいる。
【指摘】
最後に、少し目先を変えて指摘をさせていただきます。
皆さんは、常磐ハワイアンセンターをご存知でしょうか。
1966年に福島県いわき市に所在し、日本人が行ってみたい外国ナンバーワンであった「ハワイ」に、ハワイ文化に着目し、斜陽となっていた石炭業界の新たな雇用創出と収入源確保のために、常磐湯本の温泉水を利用して開発された高級リゾート施設でありました。
年間入場人員は、1970年に155万3千人となりピークを記録し、1977年頃からは110万人程度で推移、バブル景気と共に復調し140万人まで増加、1990年にはスパリゾートハワイアンズに改名し、1997年には日本一の大露風呂「江戸情話 与市」をオープンさせ120万人に回復させて、それから右肩上がりで入場人員の増加が続いているとのことです。2006年の映画「フラガール」の人気と共に、2007年には過去最高の161万1千人が入場している人気施設となっています。
単純に比較することはできませんが、2020年にオープンを予定している民族共生象徴空間に年間来場者数100万人を掲げる私たちにとって、この施設の経緯や変遷は大変参考になるものと、私は考えています。
時代背景が合致していた利点は否定できませんが、大都市圏に隣接する訳ではないのに、明確なコンセプトと共に懸命に続けられてきた営業努力が実を結び、50年もの長きに渡り営業を続け、年間入場人員100万人台以上を保持し続けるこの施設を、私たちは無視することは出来ないのだと思うのです。
まずは、アイヌ文化振興というコンセプトを、正しく広く道民の元気の源として定着させて、年間100万人来場者数の実現に必要な営業努力と、そのために必要な施設群やインフラの整備を整えつつ、虎視眈々と目標の実現へ向けて進むべきであるのです。
今回の質問は、アイヌの人たちの数の今後の推移からアイヌ文化振興の目的と手段を精査させていただいたところですが、道が果たすべき役割は、こんな好例と比較してみることからも明らかになってくるのではないでしょうか。
いま既に示されている施設プランに捕らわれることなく、決してひるむことなく、目標達成こそが北海道の元気につながることを信じて、国や道民、そしてアイヌの人たちと環境生活部の皆さんの努力の積み重ねを以って推進したいと思うところです。よろしくお願いいたします。