
この質問は、9月29日に行ったものです。
とあるキッカケで造林事業に関わることになった経験から、北海道のおける林業の成長産業化を目指す政策を知ることとなり、より効果的・効率的に実施されるために必要な諸施策について議論させていただきました。
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D,林業・木材産業の成長産業化について
私たちの北海道は、土地面積の約7割が森林に覆われており、国内の森林面積の約1/4を占めるなど、広大な森林を有しています。この森林資源を有効に活用し、林業・木材産業の成長化を図ることは、山村地域の活性にもつながるものと認識しています。
先般、改正された北海道森林づくり基本計画において、今後、道産木材供給量を増やしていくこととしていますが、森林の有する多面的機能を持続的に発揮していくためには、森林資源の循環利用を推進していくことが必要です。特に「植える」の確保が重要と考えていて、そのためには、計画的な伐採・植栽の推進とそれを維持していくための体制づくりが必要と考えています。
そこで、以下について伺います。
① 道内の森林資源の現状について
まずは、道内の森林の現状について伺います。道内の森林はどのように区分されていて、区分毎の面積等はどうなっているのでしょうか、伺います。
<答弁>
道内の森林資源の現状についてでありますが
○ 平成28年4月現在、本道の森林面積は554万ヘクタールで、
これを森林の種類毎に区分するとカラマツ、トドマツなどの人工林は、
149万ヘクタール、全体の27パーセントを占めており、
自然力の下で生育した天然林などは、
405万ヘクタール、全体に占める割合は73パーセントとなっている。
○ また、森林の所有区分では、
国有林が306万ヘクタール、民有林が248万ヘクタールで、
全体に占める割合は、それぞれ55パーセント、
45パーセントとなっている。
② 伐採が見込まれる森林について
今後、伐採が見込まれる人工林の面積と材積はどのようになっているのでしょうか、伺います。
<答弁>
伐採が見込まれる森林についてでありますが
○ 森林法に基づき、市町村が策定する森林整備計画では、
樹種毎の成長の特性や利用方法などを勘案し、
伐採の目安となる樹木の年齢が示されており、
人工林については、カラマツは留萌、宗谷地域では35年、
それ以外の地域では30年とされているほか、
トドマツは40年、エゾマツは60年、
スギは50年などと定められている。
○ この考え方に基づき試算すると、
今後、伐採の対象となる人工林の面積は、
総面積149万ヘクタールの59パーセントにあたる
88万ヘクタール、
材積は、総材積2億6千万立方メートルの75パーセントにあたる
2億立方メートルと見込まれるところ。
<指摘>
ここでは、人工林について伺ったのですが、その面積の比から考えても天然林の活用を議論の範疇に加えるべきところであります。
細かな議論は後に持ち越すこととして、次の質問に移ります。
③ 造林の実績と今後の見込みについて
伐採が見込まれる森林においては、伐ったら植えるという循環を確保しなくては、林業・木材産業の成長産業化は一過性のものとなってしまうに違いありません。そこで、これまでの民有林における造林事業の面積、年度毎の決算額の推移と今後の見込みについて伺います。
<答弁>
民有林における造林事業についてでありますが
○ 本道の民有林における年間の造林面積は、
平成27年度までの過去10カ年では、
約6,500ヘクタールから6,900ヘクタールの間で推移しており、
造林面積の増減に伴い、事業の実施に必要な国費の執行額も
20億円前後で推移している。
〇 道としては、今年3月に策定した森林づくり基本計画に基づき、
伐採後の着実な造林を進めるとともに、木材の安定供給を図るため、
計画の最終年度である平成48年度には、
平成27年度の造林面積約6,800ヘクタールを大幅に上回る
年間10,000ヘクタール以上の造林を
民有林において推進することが必要と考えており、
今後とも、必要な国費予算の確保に努めながら、
計画的に造林事業を推進してまいる考え。
<指摘>
いま教えて頂いたところによると、道内の造林事業の予算総額は40億円程度と推定することが出来ます。国内の森林面積の1/4を有する北海道として、また成長産業化としていく為の推進力とするための財源としては、少なすぎると捉えています。
ただ造林の量を増やせば良いのではありませんが、未来の北海道の元気となり得るだけの熱量を生み出すことができる絶対量を確保していくことが大切です。
造林事業の拡大については、確実に政策に折り込んでいただきたいと思います。
④ 森林整備事業のバランスについて
また、そのバランスは健全なものとなっているのでしょうか。伐採と植林の不均衡は、循環の継続を妨げます。しかも、森林整備事業は、期間の長い、息の長い事業であって、一時的な事業の縮小であっても、30年後、40年後の林業・木材産業の不安要素の起因となってしまいます。数年前に実施できなかった分を、後に追加して造林したとしても、それは帳尻が合うものではありません。日々年々到来する伐採期に対しての事業のスピード感は、30~40年サイクルで生産され続けていく、成長産業化させていく根幹であるのです。
さきほどの質問でこれまでの実績と今後の見込みについて答弁していただいておりますが、これらのバランスは健全なものとなっているのでしょうか、見解を伺います。
<答弁>
森林整備事業のバランスについてでありますが
○ 民有林において、利用時期に達した人工林の
平成27年度の伐採面積は、7,375ヘクタールとなっており、
造林面積の6,821ヘクタールを上回っている状況にある。
○ この要因としては、自然力のもとで樹木の生育が可能であり、
伐採後の造林を行う必要がなかったことのほか、
・ 造林の実施にあたり、森林所有者の負担が発生すること
・ 森林整備に意欲のない森林所有者が存在すること
・ 造林作業を担う労働者が不足していること
などにより、一部の森林において、造林が実施されて
いないものと考えている。
<指摘>
ここで言うバランスとは、単に植林と伐採のバランスだけを表しているのではなく、人工林や天然林、樹木種、就労人口等、言い換えると、生産力や加工力、商品力、販売競争力、そして消費力、このバランスを健全化させなければならないと考えています。
⑤ 伐採・造林作業を担う人材の確保について
次に、担い手不足について伺います。
我が会派の代表質問でも、林業大学校など人材育成機関について森林づくりを担う人材の育成・確保が喫緊の課題であると質問し、知事は、地域ニーズの詳細な把握に努め、設立に向けたスケジュールを検討するとし、年内に設立に関しての基本的な考え方を取りまとめると答弁されています。
伐ったら植えるという循環を確保していくためには、予算の確保も必要ですが、伐採や造林作業を担う人材を確保できなければ、必要な事業を計画的に実施するのは難しいと考えています。これまでの林業労働者数の推移と今後新たに必要となる労働者数の見込みについて伺います。
<答弁>
林業労働者数の推移などについてでありますが、
○ 道が2年に一度実施している林業労働実態調査では、
伐採、造林、苗木の生産などを担う林業労働者数は、
平成17年度の3,785人を底に緩やかに増加しており、
平成27年度には4,272人となっているところ。
〇 道では、森林づくり基本計画などで示した、
森林資源を適切に維持・管理するための造林面積や
道産木材の利用量の目標達成に向けて、
平成29年度から平成38年度までの10年間で
新たに1,600人の労働者の確保が必要と見込んでいるところであり、
通年雇用化の促進や、経験年数に応じた研修、
さらには、林業に興味を持った方の就業体験の実施など、
森林づくりを支える人材の育成と確保に向けた取組を
一層進めることが必要と考えている。
⑥ 道産木材の競争力強化に向けた今後の対策について
道内の森林資源の充実に伴って、森林からの木材供給力が増している中、伐採された木材を無駄なく有効に活用し、成長産業化につなげていくことが必要だと考えていて、品質・性能が確かな木製品を安定的に供給するなど、木材産業の競争力の強化が必要と考えています。
また、伐採が進み、道産木材の供給量が増加すると、その影響は少なくないものと想定できます。海外から安価な木材が流通する中で、道産木材の供給をどのように見込んでいるのか、道産木材の競争力をどのように評価し、競争力強化を実現させるために取り組んでいるのか伺います。
<答弁>
道産木材の競争力強化についてでありますが、
○ 本道では、トドマツなどの人工林資源が充実しつつある一方で、
ヨーロッパなどから住宅用の製材などが輸入されていることから、
森林づくり基本計画で設定した平成48年度の道産木材の供給量を
現在の1.5倍となる600万立方メートルとする目標に向けて、
生産規模の拡大やコストの低減による安定供給体制の構築や、
建築材など付加価値の高い利用の促進が必要と考えている。
○ このため、道では、国の「合板・製材生産性強化対策事業」
などを活用し、路網整備や間伐の実施、高性能林業機械の導入、
さらには、建築用の製材、集成材を加工する施設整備などを支援する
とともに、関係団体と連携し、品質や性能が確かな道産木材を使用した
建築事例の普及・PRに努めるなど、
道産木材の競争力の強化に取り組んでいるところ。
<指摘>
道内に留まることなく国内において木質チップの需要は、相変わらず高いものとお聞きしています。
しかし、道内において、その供給力は十分なものとは言えず、過去には様々に取り組まれたと説明を受けたところではありますが、コスト面での不採算性も手伝って改善しきれていないのが現状なのです。
自然再生エネルギーに対する取り組みが勢いを留めぬこれからにあっては、この点における研究や政策的な後押しも必要だと考えています。
⑦ 今後の取り組みについて
最後に、これまで見込みについて伺ってきましたが、道内の人工林資源が利用期を迎え、今後、伐採量の増加が見込まれる中で、木材の安定供給と公益的機能を図るためには、伐採後の遅滞のない着実な造林の確保が大切であると考えています。林業・木材産業の成長産業化を力強く推進するため、道は、どのように取り組んでいくのか、部長の見解を伺います。
<答弁>
今後の取組についてでありますが
○ 本道において、林業・木材産業の成長産業化を
より確かなものとしていくためには、資源の維持・管理を図りながら、
木材生産や災害の防止などの機能を発揮する
森林づくりを適切に進めていくことが必要である。
○ このため、道としては、引き続き、市町村・森林組合などと連携し、
所有者の森林経営計画の作成を支援するとともに、
森林整備事業や、道の「未来につなぐ森づくり推進事業」の
予算の確保と活用により、所有者の負担軽減などを図り、
伐採後の計画的な造林を推進してまいる考え。
○ また、関係団体と連携した研修や就業体験の実施など、
森林づくりを担う人材の育成・確保に取り組むとともに、
木材の生産コストの低減や付加価値を高めた加工体制の整備を進め、
道産木材の競争力強化を図るなど、林業・木材産業の成長産業化の
実現に向けて着実に取り組んでまいる考え。