
昨日、環境生活委員会で質問させて頂きました。
この質問は、一年前に同じタイトルで質問させて頂いたところです。
しかし、一年経過しても、その状況は大きく前進することなく、二年前となったこのタイミングで、問題点を明らかにし、道として取り組むべきことを議論させて頂きました。
「民族共生象徴空間」は国立の博物館であり、その運営主体が別に存在する環境の中で、100万人を達成していくことが、引いては北海道や地域にとって大きな地域振興(元気)に資することは明らかです。
道として、傍観者でいる訳にはいきません。
再び、三ヵ月後、半年後と同じ質問を繰り返しながら、関係者と力を合わせて来場者数100万人の実現を成し遂げなければいけません。
北の元気玉、このテーマに対して全力で取り組んで参ります(‘◇’)ゞ
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A,民族共生象徴空間の年間来場者数100万人の実現について
私は、以前に民族共生象徴空間の年間来場者数100万人の実現についての質問をさせていただいたところではありますが、今回は、平成28年11月の委員会質問での質疑答弁を前提とし、その後さまざまな環境が整いつつあるこの時点で、改めて100万人実現へ向けた課題や論点を整理しつつ質問させていただきたいと思います。
この象徴空間は、平成21年7月の有識者懇談会で提言され、関係省庁連絡会議において基本構想が取りまとめられ、平成26年6月に整備及び管理運営に関する基本方針が閣議決定された上で、2020年東京オリンピック・パラリンピックに合わせて、平成32年4月24日に一般公開される運びとなりました。
平成27年7月に文化庁が、平成28年4月には国土交通省が基本計画を策定し、象徴空間の博物館及び公園の開設へ向けた準備が進んでいることと承知しております。
そのような中で、菅官房長官が推進会議で年間来場者数の目標を100万人と提案され、作業部会が50万人としていた目標数を引き上げられた経緯があります。今回改めて菅官房長官の発言を見返してみますと「20年の東京オリパラの効果を見込めば100万人の達成も可能」と提案されていて、この見方によりますと恒常的に100万人の実現を強いたものではないとも受け取れます。
また、昨年6月に公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構が、象徴空間の運営主体として閣議決定され、1000日前記念カウントダウンセレモニーが催されるなど機運醸成を進めている最中であることを承知しております。
① 年間来場者数100万人について
最初に、その100万人へ向けた実現の責務がどこにあるのか伺います。
道は、以前の質問に、あくまでも主体は国であると答弁されています。道は、この責務がどこに帰属されていると捉えているのでしょうか。
また、その為に必要な体制として「民族共生象徴空間交流促進官民応援ネットワーク」を設立されたと答弁されていますが、昨年新たに「民族共生象徴空間開設準備支援プロジェクトチーム」を設置されています。これらの道の認識とそれぞれの関係性、更には各所がどのように実現の責務や情報を共有されているのか伺います。
<答弁>
年間来場者数100万人の実現についてでありますが
○ 国では、平成27年10月開催の「アイヌ政策推進会議」において、
民族共生象徴空間への年間来場者数を100万人とする目標を掲げたところであり、
国及び道、北海道アイヌ協会など、関係者の協力のもと、
その実現に向けた様々な取組が進められるものと認識。
○ また、昨年12月には、平成30年度の政府予算案を閣議決定し、
象徴空間の開業準備経費を盛り込んでいることから、
新年度より、国と、運営主体となるアイヌ文化財団が、情報発信や
プロモーションなども含めた準備を進めていくものと承知。
○ 道としても、来場者目標100万人の実現に向け、
一昨年11月に官民をあげた応援ネットワーク組織を立ち上げ、
ポスターやPR動画の作成、ポータルサイトの開設など情報発信に取り組んできている。
○ また、昨年7月には、国や民間企業等との連携による
開設準備を支援するプロジェクトチームを設置し、誘客促進策や道内各地との連携、
魅力的な演出などの検討を行っているところであり、今後とも、
国やアイヌ協会、アイヌ文化財団、地元白老町などと一体となって、
開設機運の醸成や誘客促進の取組を進めてまいる。
② 実現へ向けた計画の策定について
道は、100万人の実現へむけた諸計画をどのように把握されているのでしょうか。
道には、100万人の実現へ向けた計画の策定に関与する必要があります。
その計画には、2020年の東京オリパラの誘客効果への期待を含めた初年度に100万人実現を目指すものと、その後の継続的な実現へ向けたものの二種類が考えられます。
また、私は、その計画が何を期待してのものであるのか、言わば100万人の実現がもたらす効果と、そのために必要な熱量が明確になっていないと考えています。
道は、菅官房長官によって示された100万人という目標を、象徴空間開設初年度にあたる2020年度にのみ適用されているとしているのか、更に2021年度以降の来場者数についてどのように捉えているのか、それらの計画は誰が策定し、どのようなものであるのか伺います。
<答弁>
実現へ向けた計画についてでありますが
○ 平成26年6月に国が策定した「民族共生象徴空間の整備
及び管理運営に関する基本方針」では、象徴空間全体の円滑な運営を図るため、
関係者による象徴空間運営協議会を設置し、
象徴空間の一般公開までに、運営協議会を活用しつつ、
象徴空間の運営方針の策定、運営主体の業務実績の評価、
その他の象徴空間の適切かつ効率的な
運営を確保するために必要な仕組みを構築することとしている。
○ 運営主体に決定されたアイヌ文化財団では、
今後策定予定の運営方針等に基づき、象徴空間の管理運営業務を担うこととなることから、
道としては、開業準備活動を円滑に進めるためにも、国に対し、
早期に運営協議会を設置し、年度ごとの年間来場者目標なども盛り込んだ
運営方針等の早期策定を行うよう、求めてまいる。
③ 民族共生を満足させる運営について
次に、民族共生に足る運営の姿について伺います。
「面白くなければ博物館じゃない」 これは、1月22日からの当委員会の道外視察に参加させていただき、九州国立博物館を訪れた際に知った印象的なキャッチフレーズの一つです。
平成17年に開館され、年間来館者120万人程度を有するこの博物館は、年間1000万人が訪れる太宰府天満宮と隣接する好立地に支えられています。福岡県域圏200万人では足りない環境の中で、集客を維持していくための絶え間ない努力を解説して頂くことができました。
敢えて言うならば、あの太宰府天満宮を抱えた好立地でさえ、来館者が年間120万人程度であることを知るならば、白老町に立地する民族共生象徴空間で100万人を実現させていくために、どれほどの努力を積み重ねなければならないことであるのかは、想像を超えるものとなるに違いありません。
民族共生象徴空間に年間来場者100万人を継続して実現させていくためには、アイヌ文化のみのコンテンツには限りがあることは明白であり、構成要素である「国民」「北海道民」「地域住民」そして「アイヌの方々」による民族共生であることを意識して、工夫を凝らした運営方針や展示方針が必要であることを理解したところです。
しかし、これまでの施設設置の経緯等を見返すと、むしろ民族共生の一方を重く取り上げた内容となっていて、来場者数100万人を実現させていくための力としては、足りていないことが考えられます。
来場者100万人を実現させていくためには「面白くある民族共生象徴空間」であらなければならず、民族共生である以上は、先に述べた構成要素を十分に意識した運営となるように、道は、国や運営主体に働き掛けていくことが必要です。見解を伺います。
<答弁>
象徴空間の運営についてでありますが
○ 象徴空間の整備や運営に際しては、
展示機能はもとより、文化伝承、体験交流メニューの充実や
ハワイのポリネシア・カルチャー・センターのような
来場者に楽しんでいただける魅力ある事業展開も必要と考える。
○ 国立アイヌ民族博物館基本計画においては、
国内外の博物館や研究機関、伝承活動を行う団体の協力を得ながら、
アイヌの歴史や文化に関する正しい知識を提供するための展示を
行うこととしており、常設展以外の特別展にも力を入れ、
他の国立博物館で開催される企画展の誘致など、
誘客効果を高める多様な取組が検討されているところ。
○ 道においても、開設準備支援プロジェクトチームを設置して、
国とともに象徴空間における民族共生の理解が深まるような
体験交流メニューの充実や、魅力的な展示、演出などについて企画検討を進めており、
その結果を象徴空間における事業展開に反映させるなど、
国内外の多様な人々をひきつける魅力づくりに取り組んでまいる。
④ 100万人を数える範囲について
次に、どの範囲に来場される方々を数えて100万人としているのか質問します。
平成28年7月に推進会議が策定した基本構想によると、象徴空間は、1,中核施設 2,慰霊施設 3,関連区域 4,広域関連区域 の4つの区域によって構成されています。
4,広域関連区域に至っては、白老町以外の区域で中核地域と連携し、文化伝承活動等を実施する地域と定義されています。更に、3,関連区域には、白老町内の仙台藩陣屋地区や白老港地区にまで範囲は拡大され、象徴空間を来場者が訪れる範囲が広域なものとなっていることは、100万人を定義する上で不確定な要素となっていることが考えられます。
道は、国や運営主体と連携して、年間来場者100万人を数える範囲をどのように定めていて、その情報はどの範囲で共有され、どのように公開されることになるのか、見解を伺います。
<答弁>
100万人を数える範囲についてでありますが
○ 民族共生象徴空間基本構想では、象徴空間は、国立アイヌ民族博物館及び
国立民族共生公園で構成する「中核区域」と、遺骨等の慰霊及び管理のための「慰霊施設」、
豊かな自然を活用して、文化伝承活動、体験交流活動等の取組を実施する「関連区域」、
白老町以外の地域で、中核区域と連携して文化伝承活動等を実施する「広域関連区域」の
4つの区域で構成するとされている。
○ 象徴空間への来場者数については、
他の国立博物館と同様に、各種の広報媒体を通じて公表され、
国やアイヌ文化財団はもとより、道、白老町、アイヌ協会など、
今後設置が予定されている象徴空間運営協議会の構成員にも共有され、
象徴空間の運営の検討に資することになると考えるが、
象徴空間への来場者数を把握する区域の範囲及び
公表時期などについては、本施設のアイヌ文化の復興等や
国民理解の促進を図るという目的に即して、
運営方針等において示されるよう、国に求めてまいる。
⑤ 目標達成の方法について
次に、これらの目標達成の方法について伺います。
この目標は、発表すれば、掲げれば達成できるものではありません、それは、言うに及ばず仕掛け作りが必要です。100万人の目標達成に必要な熱量に応じて、視点を変えた、視点を重ねた方法が求められています。開設まで2年となった今、そのために残された時間は多くはありません。
国と運営主体、道と自治体、そして地域住民とそれぞれに果たすべき役割は多くあります。
道は、道自身が果たすべき役割を明確にしつつ、関与するそれぞれに果たしていただかなければならない役割を確認し、実行していただかなければならない立場にあるものと考えています。
道が見込んだ仕掛け作りは十分なものであるのか、また、道は、必要な予算や施策をどのように目論んでいるのでしょうか。道の見解を伺います。
<答弁>
目標達成の方法についてでありますが
○ 来場者目標100万人の実現のためには、
展示機能はもとより体験交流メニューの充実など魅力ある事業展開、
周辺の交通アクセスの充実、商業施設等受入環境の整備、
道内各地のアイヌ文化や観光資源との連携に加え、
国内外に向けた効果的・効率的な誘客の促進が必要と認識。
○ このため道では、開設準備支援プロジェクトチームを設置し、
今年度、実施している国の調査事業を活用して
象徴空間への来訪者像を整理した上で、国籍別や個人・団体などの旅行形態に応じた
効果的なプロモーションの展開方策などの検討を進めているところ。
○ また、今年度から、象徴空間の一般公開に向けた
アイヌ文化発信事業として、約4,200万円の予算を計上し、
平取町、札幌市、釧路市など道内各地でイベントを行うとともに、
東京都や先住民族文化を振興する台湾、ハワイにおいて、
古式舞踊の披露などを通じたPR活動など、道内外及び海外へのアイヌ文化の情報発信、
象徴空間のPR活動に取り組んできたところであり、
こうした事業に参画された方々からいただいた課題やニーズを踏まえながら、
今後、国やアイヌ協会、運営主体、地元白老町などとも
しっかりと連携を強め、より効果的な取組を進めてまいる考え。
⑥ 共同運営について
先の九州国立博物館の視察で教えて頂いた運営方法は、国と県、そして地域住民による共同運営という方法でした。組織体や予算付けは複数に渡るものの、そのメリットを活かすことで自らの役割を明確にして、積極的な博物館の運営を実現させているものと教えて頂きました。
国と運営主体が、既に基本計画等で示された目的を表す場として象徴空間を活用し、道や自治体、地域住民が民族共生の構成要素を満足させるための目的を表す場として活用することができるならば、それぞれが協働し、多くの方々にお越しいただくことのできる空間を提供することが出来るのではないでしょうか。
九州国立博物館が総合博物館ならば、民族共生象徴空間は単科博物館です。
太宰府天満宮に匹敵する強力なコンテンツが隣接している訳ではありません。
コンテンツが狭い分を深く展示したとしても、対象範囲を広げることができたとしても、来場者100万人という高い目標を実現するには並大抵の努力の積み重ねでは足りることはありません。
そして、開設2年前となった今にあっても、その具体的な計画でさえ見通すことが出来ていない状況は、決して歓迎できる環境ではないことが明らかです。
道と自治体、地域住民の皆さんには、この空間を使って「共生」を実現させ、北海道の元気を、地域の活力を生み出していかなければならないのだと考えています。
道には、これまで状況を客観視するのではなく、共同運営という使命と責任を共有できる環境を関係者に提案し、果実としての「稼ぎ」を実現させていくことが必要です。共同運営体制の確立について、道の見解を伺います。
<答弁>
運営体制の確立についてでありますが
○ 九州国立博物館は、独立行政法人国立文化財機構が運営する「博物館」と、
福岡県が運営する「県立アジア文化交流センター」が併設され、
一体として管理運営が行われているものと承知。
○ 一方、象徴空間は、アイヌ文化の復興等に関する
ナショナルセンターとして国が整備するものであり、
その運営は、アイヌ文化財団が担うこととされているところ。
○ 道では、国内外から多くの方々に象徴空間を訪れていただくため、
機運の醸成や誘客促進に取り組むとともに、地元白老町と連携し、交通アクセスの改善や
商工観光ゾーンの整備など、受入体制の充実に取り組んでいるところ。
○ 今後、国とアイヌ文化財団などが一体となって、開設準備を進めることとなるが、
象徴空間の安定した管理運営体制の構築が図られるよう、
道としても、運営協議会の場などを通じて、国に必要な提案や協力を行うとともに、
道における支援体制や事業の充実強化を図るなど、積極的に役割を果たしてまいる考え。
⑦ 道の決意について
最後に、来場者目標100万人の実現へ向けて、道として、今後どのように考えて取り組んでいくのか伺います。
<答弁>
今後の取組についてでありますが
○ 象徴空間は、我が国が誇るべきアイヌ文化を国内外の多様な人々へ発信することを通じ、
アイヌ文化の復興等に寄与するとともに、
道内各地域のアイヌ文化の振興や観光をはじめとした
本道の活性化につながるものであり、その開設効果を
全道各地へと広げていくことが重要と考えているところ。
○ このため、道では、官民応援ネットワークによる機運の醸成や誘客促進のほか、
開設準備支援プロジェクトチームによる、魅力的な演出や
道内各地との連携方策の検討などを進めるとともに、
開設1000日前カウントダウンセレモニーや道内をはじめ首都圏、海外において
アイヌ文化発信イベントを開催するなどの取組を進めてきたところ。
○ 新年度には、アイヌ文化財団とアイヌ民族博物館が合併し、
開設準備が本格化するところであり、
道としても、象徴空間の開設を千載一遇の機会と捉え、
国内外からたくさんのお客様に北海道を訪れていただくことで、
アイヌ文化の復興や創造発展、さらには道内経済の活性化、
地域創生の好循環へとつなげていけるよう、
道としても全庁的な体制や事業の充実・強化に取り組んでまいる。
<指摘>
言うまでもなく、良い展示があれば、必要な来場者の確保が実現できるわけではありません。あくまでも、良い展示は手段でしかないのです。
では、100万人の来場を実現することが目的なのでしょうか。それも違います。100万人の来場者を実現できた暁には、この地域、ひいては北海道の観光客等への優良な観光コンテンツの提供が実現し、地域経済やインフラ整備に直結することとなり、その地域や北海道民の暮らしやすさや元気につなげていくことが目的となるのだと考えています。更には、国や道が進めるアイヌ政策の国民理解の促進をはじめとするアイヌ文化の復興を実現させる大きな機会であることは明らかです。
私は、民族共生象徴空間の開設だけではなく、100万人という大きな目標の設定によって、それを実現させる過程で生み出される官民が一丸となった「その先の、道へ」進む北海道の熱量、元気に直結させることが出来ると確信しています。
私は、年間来場種数100万人という目標が設定されてから1年以上が経過した今、その達成へ向けた努力の積み重ねが明らかに感じることが出来ていない今を憂いています。
道は、国や関係各所と協力し、その為に必要な努力を積み重ねることを怠らず、北海道民に、その道の先に輝く北海道の姿の一端を示していただきたいと願っています。
以前の私からの質問でもお示したように、知事を筆頭とした関係各部職員の皆さんが実体となった必要とされる努力の積み重ねを期待してこの質問を終わります。
ありがとうございました。