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2018/11/26

平成30年 環境生活委員会 第四回定例会 前日委員会 「水道事業について」

A,水道事業について

 

水道事業については、先の決算特別委員会において議論されたところではありますが、国では、来年度から水道事業統合に向けた取組を進める方針と聞いております。

 歯止めがかからぬ人口減少によって水需要は減少し、市町村の水道事業は経営悪化が深刻化しています。そこで、水道法の改正案の中では、都道府県を調整役にして、全国で6580事業者の統合を進める方針であると報じられていました。

 道内において人口が5000人以下の自治体は、平成29年度で76自治体であり、今後の人口減少を見込むと6000人以下の自治体は、同じく92自治体となり、実に51%、半数を超える自治体が、厳しい水道事業経営環境に置かれることが容易に想定できます。

 そして、厳しい環境に置かれてしまう自治体は、なにも149もあるの過疎地域の指定を受けた自治体に限ったことではありません。それは、政令指定都市である札幌市でさえ収支的収支で黒字化させているものの、将来の資本的投資の抑制で財政収支を組み立てざるを得ない厳しい環境であることは明白です。

 そこで、以下何点か伺います。

 

    道内自治体の水道事業について

最初に、道内の水道事業の実態について伺います。

給水人口5001人以上の上水道事業者は全国に1355あり、そのうち3割ほどが赤字経営となっていて、給水人口5000人以下の簡易水道事業者は全国に5133あり、その経営環境はさらに厳しいものであることが判明しています。

では、道内における上水道水道事業者及び簡易水道事業者の内訳と、その経営状況について伺います。

 

<答弁>

道内における水道事業の状況についてでありますが

  平成28年度末現在における上水道事業は93、

  簡易水道事業は239となっています。

 

  道内の水道事業の経営状況としては、

  近年の人口減少による水道料金収入の減少、高度経済成長期に、

  整備した施設の更新に多額の費用を要することなどに加え、

  本道は積雪寒冷で人口密度が低く、

  施設の設置や維持管理に要する費用が割高で、

  全国的にみても、事業運営が厳しい状況にあるところ。

 

 

    道内の水道事業の広域連携について

次に、道内の簡易水道事業者のうち、どれくらいの広域連携が進んでいるのでしょうか。また、経営ベースで統合に至るまで広域化が進んでいる事業者はどのようになっているのか伺います。

 

<答弁>

水道事業の広域連携についてでありますが

  簡易水道事業については、

  平成18年度に示された国の方針により、事業の経営基盤強化等の観点から、

  同一市町村内に多数あった簡易水道の事業統合が進められ、

    平成19年度の327から、平成28年度には239となったところ。

 

  しかしながら、市町村を越える事業統合には、至っていない状況にあります。

 

 

    道内の水道事業者の経営状況について

次に、道内の水道事業者のうち、どれくらいが収益的収支ベースで黒字経営となっていて、どれくらいが赤字経営となっているのでしょうか?

更に、当該自治体による一般会計からの補てんで黒字決算とされている水道事業者は、どの程度あるものでしょうか、伺います。

 

<答弁>

道内の水道事業者の経営状況についてでありますが、

  平成28年度決算における道内204の水道事業会計でみると、

  収益的収支ベースで黒字の事業は、168事業、約82%であり、

  赤字の事業は36事業、約18%となっているところ。

 

  また、黒字の168事業のうち、一般会計からの補てんにより、

   黒字となっているものは、28事業、約17%となっているところ。

 

 

    水道事業の実態について

次に、水道事業の実態について伺います。

例え、収益的収支ベースで黒字化できていたとしても、その実は、将来的に発生する膨大な管渠や管路、浄水場の更新・改修などの費用を正しく資本的収支ベースで見込むと、その状態は、途端にバランスが取れなくなることは既に議論されてきた通りです。

水道が、私たちの暮らしに不可欠なインフラである以上は、行政が責任をもって安心して使用できるように維持管理していかなければならないものです。

今まさに、それを担保できる経営環境を整えていくために、国は、水道法の改正や国庫補助金の拡充や地方交付税の増額による手厚い財政支援を施してでも、各水道事業者の自立を実現させようとしています。

そこで、数点伺います。

 

Ⅰ,道は、水道事業者や民間事業者による協議の場として「地域別会議」を設け、それぞ

れの意見や課題をとりまとめたとお聞きしております。

その会議でとりまとめている統合や広域化はもとより、体制の維持や管渠・管路、そ

して浄水場の更新や改修についての課題について、どのように認識し、今後どのよう

に対応していくことにしているのか見解を伺います。

 

<答弁>

水道事業の課題などについてでありますが

     道では、平成25年度に、水道事業が抱える課題の解決に向け、

  意見交換や取組方策の検討を目的として設置した「地域別会議」を

  6地域でこれまで延べ28回開催してきたところであり、

  この中で、水道事業者からは

  ・技術系職員が不足し、保守管理等の技術継承が難しいこと

  ・水道料金収入が減少する中、施設更新に係る財源が不足していること

  等の課題が示され、

    また、民間事業者からは

      ・管理委託の共同化など、できることから進めて、事業の効率化を

図ることが大切との意見が出されたところ。

 

  道としては、これらの意見等を踏まえ、

  今後も「地域別会議」の開催等を通じて、

  関係者間の一層の意識共有を図りながら、

  地域の実情にあった広域連携を促進し、

  水道事業の基盤強化が図られるよう努めてまいる。

 

 

 Ⅱ,道は、各水道事業者による更新計画の有無や今後の料金や予算の見込み、そして技術系職員の充足について承知しているのでしょうか。また、各計画の適正さの評価をしているのでしょうか、見解を伺います。

 

  <答弁>

水道施設の更新等についてでありますが

  持続可能な水道事業とするためには、

  中長期的な施設更新需要や、今後の予算の精査、

  水道料金の検討などを的確に行うことが必要となることから、

  計画的な施設の更新と必要な資金確保等について検討を行う、

  いわゆる「アセットマネジメント」を実施し、

  それに基づく水道施設の更新計画の策定が必要となります。

  

  道内の上水道事業及び水道用水供給事業では、

  アセットマネジメントを約65%で実施、

  管路に関する更新計画は約60%で既に策定されている状況であり、

  道では、それぞれの事業が、更新計画に基づいて行われているか否かについて、

  水道法に基づく立入検査で確認しているところであります。

 

  しかしながら、更新計画を未だ策定していない事業者も多いことから

     道としては、引き続き、水道事業者に対し、アセットマネジメントの実施

   と更新計画の策定について指導・助言を行ってまいる。

 

 ○  また、水道事業を担う自治体の技術系職員の充足状況については

  地域別会議等の機会を活用し、実態把握に努めており、

  多くの自治体で、技術系職員の不足による技術の継承等の課題を抱えている状況。

 

 

<指摘>

 いま答弁いただいた中で、アセットマネジメントや更新計画の策定率が60%程度とお

聞きしました。この度の改正案によると、「水道事業者等は、長期的な観点から、水道施設

の計画的な更新に努めなければならないものとする。」と資産管理について推進を示してい

ます。

道内の水道事業者による策定率が60%ということが、増加してきている過程なのかに

もよりますが、いつか策定すれば良いものなのではなく、その全ての水道事業者が策定を終える時期やそれまでの段階別に策定率を掲げながら、水道事業者に策定を強く求めていくことが必要です。

 さまざまな事情があることは承知していますが、住民が安定して安全な水道を使い続けることが必要である以上は、市町村や水道事業者はその義務を負っていることを忘れてはいけません。これ以上の先延ばしは決して許されることではありません。

 道は、この点を厳しく発信していく必要があります。くれぐれも傍観者として携わらぬように要請しておきます。

 

 Ⅲ,道は、統合や広域化について検討を始めている水道事業者について把握しているのでしょうか。道が果たすべき役割は、計画策定の推進にとどまることはありません。道内の健全な水道事業の継続を実現させるために、どのような役割を果たしていく考えであるのかを伺います。

 

<答弁>

道の役割についてでありますが

  人口減少により料金収入が減るなど

  水道事業を取り巻く環境が厳しさを増す中、

     本道では、経営基盤の弱い中小規模の事業者が多く、

  これらの水道事業を持続させていくためには、

  事業統合や施設の共同利用、維持管理の共同委託などといった

  広域連携により事業の効率化を

  図っていかなければならないものと認識。

  

  このため道では、これまで「地域別会議」等において

  水道事業者間における意見交換を行うなどして

  広域連携の推進に努めてきたところであるが、

 

  今後はこの「地域別会議」等において、先進事例の紹介のほか、

  地域の実情にあった連携手法を具体的に提案するなどして、

    広域連携に向けた取組が具現化されるよう、

  水道事業者の一層の意識の醸成を図り、

   道内の水道事業の広域連携が進むよう、

  道として、その役割を果たしていく考え。

 

 

 Ⅳ,近年、全国各地で災害が多発する中で、本道でも9月6日に北海道胆振東部地震が発生し、水道にも大きな被害があったと承知しています。大規模な災害が発生した場合には、市町村単位での対応が難しくなることが想定できます。

今回の地震において、震源地近くで大きな被害があった厚真町や安平町は中小規模の水道事業者となりますが、どのような体制で断水の解消や通水を果たしたのか伺います。

 

<答弁>

胆振東部地震に対する対応についてでありますが、

  被災自治体においては、大きな災害が発生した場合の復旧等対応について、

  全国の水道事業者などで組織する公益社団法人日本水道協会の

  北海道地方支部と、災害時応援協定を締結しており、

  今般の災害においても、この協定に基づいて、

  札幌市を中心とした道内水道事業者等から、

  応急給水や応急復旧のための職員の派遣や

  資材の提供などの支援が行われ、漏水調査や補修工事等

  断水の解消に係る措置がとられたところ。

 

  また、道としては、発災翌日の9月7日から職員を現地に派遣し、

  被災地の被害状況の把握や、被災した水道事業者に対し、

  応急復旧への助言を行ってきたところ。

 

 

    北海道の水道水のPRについて

次に、北海道の水について伺います。

私は、北海道の水については高い評価を受けていると自負しています。それは、天然水に留まらず、水道水についても同様です。

私たちの暮らしに密着している水道事業の抱える課題ばかりではなく、その優位性を認識していただけるように道民の意識を醸成していくことや、日本国民や海外に広くアピールしていくことは、北海道を愛する道民の皆さんや水道事業に関わる全ての方々へのエールにも繋がることと考えます。

道は、61日から7日に催される水道週間で、これまで様々な取組みを展開してきていると承知していますが、新たに、道内の水道事業者から参加を募り、「美味しい水道水コンテスト」を開催することで、道内外、国外へとアピールすることができると思いますが、見解を伺います。

 

<答弁>

水道水の利用促進についてでありますが

  本道は総面積の約7割に当たる、554万ヘクタールが森林で覆われ、

  山々から流れる数多くの河川は清涼で豊富な水道水源となっています。

 

  道内には、これらの水源から作った水道水を

  安全で安心かつ「おいしい水」として

  PRに努めている水道事業者もあることから、

  道としては、道民はもとより広く道外の方々にも、

  本道の水道水のすばらしさについて、HP等を活用して発信するほか、

  水道週間の機会等を活用して、新たに、

  道内の水道事業体が作ったボトルウォーターを

  一斉に集めたイベントを開催するなど、

  広く道内外に周知してまいります。 

 

 

<指摘>

 なかなか難儀な質問であったのかもしれません。

 しかし、蛇口を捻れば当たり前に水が出てくる、水がタダであるという意識が根付いている日本では、水道事業者の危機意識を高めながら、同時に使用する住民の意識も併せて高めることで、今後到来する更新や改修などの避けることができない費用負担について理解を求めていくことが大切です。

 私は、そんな事実を周知するだけではなかなか理解は得られないのだと考えています。

 一方で、美味い不味いの品評が大切なのではなく、故郷の、北海道の水が美味しいことを、いかに誇りとしてアピールしていくのかは、地域の水道事業の維持継続にとって欠かせないポイントとなるのではないでしょうか。

 よって、一斉に集めたイベント程度では、その効果は限定的です。

 その効果の拡大や具体的な手段については、別の議論で深めることとしたいと思います。

 

    水道法改正案による協議会の設置について

今国会では、経営環境の改善を喫緊の課題とした水道法改正案が継続審議されていて、水道事業の基盤を強化することを目指しています。

 これまで質問してきたような現状を早期のうちに改善していかなければ、急激な人口減少を避けられない北海道においては、安全で安定した水道水の供給がままならなくなることが現実になってしまうことが視野に入ってきているのです。

 そこで、改正案では、広域化に向けて都道府県が関係市町村による協議会を設置できるようになると報じられています。

 この協議会に期待されている役割は、統合と広域化へ向けて背中を押す役目であることははっきりしています。

 一方で、「地域別会議」で意見や議論が取りまとめられているように、他府県と大きく異なる人口が分散化された北海道においては、一概に方向性を定めることができないことも確かなのです。

 よって、改正案に基づいて「北海道水道事業経営統合広域化協議会」を早期に設置し、その協議会の下で「地域別会議」が機能するように設えることが必要です。

 今回の取組みでは、各地域の諸事情を優先する余りに水道事業者の統合や広域化が進まないことは、未来の道民の不利益に直結してしまうことは明白です。

 道は、この機会をどう捉えて考えているのか、どのように対応しようとしているのか、そして、この協議会をいつ設置する考えがあるのかを伺います。

 

<答弁>

協議会の設置についてでありますが

  人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化、

  技術系職員の不足等の様々な課題を抱える

  水道を維持・継続していくためには、

  水道事業者が、相互理解のもと、広域連携を進め、

  事業の効率化を図ることが重要と認識。

 

  このため、道では、「地域別会議」を設置し、

  地域の水道が抱える課題の解決に向け、水道事業者間で

  広域連携に向けた認識の共有を進めてきたところであり、

  平成30年度には、木古内町と知内町との共同委託の動きも

  現れてきたところ。

 

  現在、国では都道府県が広域連携の推進役となるよう

  水道法改正の手続きを進めているところであり、道としては、

  この法改正を広域連携推進のための重要な契機として捉え、

  「地域別会議」等を通じて、より一層

  各水道事業者における広域連携の意識の醸成を図るとともに、

  その意向も十分確認しながら、

  改正法に基づく「協議会」が早期に設置できるよう

  取組を進めるとともに、各地域における「協議会」で、

  水道事業者間の連携についての具体的な検討や取組が進むことで、

  水道事業の基盤強化が図られるよう取り組んでまいる。

 

 

<指摘>

 今回の議論の中で、「統合」と「広域連携」の意味合いの違いが気になっています。それは、その対象が隣接市町村である場合や同一市町村内の場合と、多岐に渡るケースがあって、水道料金や将来に渡って発生する維持管理の費用の多寡によって、地域別会議の場でも議論が深まっていないとお聞きしています。

 改正案が示す意図を違うことなく、道として市町村に現実を強く知らしめていかなければ、これまで同様に問題や課題の先送りにしかならない、お茶を濁す程度の議論にしかならない可能性が容易に想定できます。

 道は、強いリーダーシップを発揮して、本政策にあたっていただくように要請しておきます。

 

<指摘>

 もう一つ指摘を加えます。

 私は、これまでに上水道や下水道についての議会議論を行ってきましたが、その都度お伝えさせて頂いていることの中に、行政側からの視点のみでこの課題に望むのは現実的ではないと繰り返しお伝えしています。

 行政側からの視点とは、耐用年数と更新・改修のための予算付けの都合で、いくら完璧な事業計画を組んだとしても、それは実現できないものでしかないということです。

 更新や改修を進めるには、道内工事業者の皆さんの協力が欠かせません。

 人口減少と共に、人手不足が進行し、更に建設土木業界におけるそれは顕著なものであることは明らかです。

 同時に、業界における新技術や新工法の開発は、避けられない人件費や資材費の高騰の打開策として期待されるところでもあります。

 また、民営化を含めた民間力の活用は、抜本的な課題の解決に大きく寄与することになるとも考えられています。

 これらについて日常的体系的に情報共有と議論を深めていくことが重要であり、行政による情報の公開によって、想定される工事量と工事時期の的確な把握がなされます。

そして、関係業界の皆さんの計画的な人員配置と設備投資が実現します。

そこではじめて予算執行の的確化が実現するものと考えています。

 だからこそ、今回の質問で主題としている協議会が果たす役割が非常に大きいものと判断しているのです。せっかくの機会ですから要望しておくと、この協議会には、業界団体の代表者と情報提供や交換が可能となる部会の設置も求めておきます。

 道は、道内自治体に対して道が果たすべき役割を積極的に認識し、この好機を逃すことなく、広く道内で安全で安定した水道水の提供と維持を実現させるサポートを行うことができるように行動を積み重ねるよう強く要請して質問を終わります。ありがとうございました。