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2019/12/10

令和元年 第四回定例会 予算特別委員会 「日米貿易協定について」

一 日米貿易協定について

はじめに、日米貿易協定についてですが、

日米貿易協定による本道農業への大きなダメージが危惧されることから、今定例会でも、我が会派では、一般質問で道の対応等を伺ってきましたが、新たな国際環境の下で、本道の基幹産業である農業が持続的に発展していくためには、対策の一層の強化が必要なことから、今後の対応などについて、以下、伺います。

 

(一)影響試算について

道は、日米貿易協定に係る影響試算において、関税削減に伴い生産額は減少するものの、国内対策の効果を見込み、生産量は維持されるとしています。

国でも同様の表現をしていますが、何故、生産量が維持されることになるのか、改めてその考え方を伺います。

 

<答弁>

生産量の維持についてでありますが、道が行いました影響試算では、産地パワーアップ事業、畜産クラスター事業などの体質強化対策により、生産コストの低減や品質向上による国産の需要を確保することができ、牛・豚マルキンなどの経営安定対策により、価格下落に対しても所得が確保されることで、生産量が維持されると見込んだところであります。

 

 

(二)道の要請について

日米貿易協定により、国が「総合的なTPP等関連政策大綱」を改訂する方針を示したことを受けて、道は、関係団体とともにオール北海道で要請を行ったところですが、大綱の改訂に向けて、どのような点を重視して要請を行ったのか、伺います。

 

<答弁>

国への要請についてでありますが、道では、総合的なTPP等関連政策大綱の改訂に向け、日米貿易協定の合意による影響などについて、丁寧な説明を求めるとともに、農業の再生産を可能とする万全な対策として、体質強化対策、経営安定対策、TPP11協定の見直しを国に要請したところであります。

 具体的には、体質強化対策として、 畜産クラスター事業や産地パワーアップ事業をはじめ、多様な担い手の育成、スマート農業の推進など、農業の生産基盤の強化に向けた対策の充実、輸出の拡大に向けた環境の整備、国産ナチュラルチーズ対策などの農林水産物等の競争力の強化を、また、経営安定対策として、牛・豚マルキンや加工原料乳補給金制度、畑作物の直接支払交付金などの対策の適切な運用を、さらに、牛肉、豚肉、ホエイのセーフガードが適切に発動されるよう、TPP11協定の修正をそれぞれ求めたところでございます。

 

(三)牛肉のセーフガードについて

牛肉のセーフガードについては、2020年度の発動基準数量が24.2万トンと、昨年度の米国からの輸入実績を下回る水準となった一方で、TPP11のセーフガード発動基準数量は、米国を含むTPPの数量のままであり、実質的には、豪州などからの輸入増に歯止めが効いていない状況と考えます。

道は、どのような認識でいるのか、伺います。

 

<答弁>

牛肉のセーフガードについてでありますが、日米貿易協定の合意により、米国産牛肉の輸入急増に対するセーフガードが措置された一方、TPP11協定に基づくセーフガードの発動基準数量が、米国を含むTPP協定と同じであり、実質的に発動しづらい状況でありますことから、TPP11協定の修正が必要と認識しております。

 このため、道では、10月下旬に実施した総合的なTPP等関連政策大綱改訂に関する要請や、11月下旬に実施した、国の農業政策に関する提案において、セーフガードが適切に発動されるよう、TPP11協定の修正を要請してきたところでありまして、今後とも、適時適切に国に求めてまいります。

 

 

(四)牛肉生産への影響について

道が行った日米貿易協定の影響試算では、とりわけ米国産牛肉と肉質面で競合するホルスタイン種などの乳用種への影響が大きくなっています。

本道でもこれからは、他府県の主産地に負けない、国内外から高い評価が得られるような和牛の生産拡大に取り組んでいく必要があると考えます。

道では、和牛の生産振興をどのように考えているのか、伺います。

 

<答弁>

和牛の生産振興についてでございますが、本道は、和牛の飼養頭数では、鹿児島県や宮崎県に次ぐ、第3位の産地でございまして、府県に子牛を販売する、いわゆる、素牛供給地域としての役割を果たすとともに、近年は、国内外において和牛の需要が高まる中、北海道ブランドとしての牛肉生産の取組を進めてきたところでございます。

こうした中、このたびの日米貿易協定におきましては、米国向け牛肉の輸出枠が拡大されたほか、先月25日には、日中間で動物衛生検疫協定が署名をされるなど、今後、牛肉の輸出機会が拡大していくものと承知しております。

 道では、これまでも、令和7年度を目標年とする「第7次北海道酪農・肉用牛生産近代化計画」に基づきまして、和牛の生産振興に向けて、優良な種雄の造成や繁殖雌牛の確保、飼養管理技術の向上などに取り組んできたところであり、今後も引き続き、関係団体・機関と一体となりまして、更なる和牛の生産振興を図りながら、本道の和牛の主産地としての確固たる地位の確立に努めてまいります。

 

(五)畑作農業の課題について

今回の日米貿易協定では、道の試算で生産減少額が大きいとされた牛肉や乳製品など、畜産・酪農への対応ばかりがクローズアップされていますが、日米貿易協定だけでなく、既に発効しているTPP11や日EU・EPAにおいて、小麦を始め、畑作物についても関税削減による生産額の減少といった影響があると試算されており、輪作を基本とする本道の畑作農業への影響が懸念されます。

道では、こうした情勢を踏まえ、本道の畑作農業が抱える課題をどのように認識しているのか、伺います。

 

<答弁>

本道の畑作農業の課題についてでありますが、日米貿易協定など、国際化が進展する中、実需者のニーズに即した高品質な畑作物の安定生産が課題となっているほか、地域におきましては、農業の担い手不足や高齢化が進行し、労働力不足が深刻化しております。

 また、本道の畑作の安定的な生産に不可欠な輪作を構成します畑作4品につきましては、小麦や大豆の作付面積が増加する一方、これらに比べ、労力を必要とするてん菜や馬鈴しょの作付が減少傾向にありますことから、バランスのとれた輪作体系を維持することが課題となっております。

 

(六)畑作農業の推進方策について

適正な輪作体系を維持しながら、土地資源を活かした本道の畑作農業が、今後とも持続的に発展していけるよう、道として、どのように取り組んでいくのか、伺います。

 

ドローンによる農薬散布など、スマート農業の積極的な導入による省力化の推進のほか、排水対策などの農業基

<答弁>

畑作農業の振興についてでございますが、本道の畑作農業は、我が国の食料の安定供給とともに、地域の産業と結びつきながら、雇用や経済を支える基幹産業として重要な役割を果たす一方、国際化への対応や労働力不足など、多くの課題を抱える中で、関係機関・団体が一体となって、これらを克服し、国内外に競争力のある生産体制を構築することが必要と考えてございます。

 このため、道では、国の「産地パワーアップ事業」や「畑作構造転換事業」などを効果的に活用しながら、てん菜や馬鈴しょの大型移植機や収穫機の導入をはじめ、トラクターの自動操舵や

盤整備の推進、さらには、実需者が求める品質を確保するため、新たな品種や技術の開発・普及などを総合的に推進し、実需者ニーズに即した生産や適正な輪作体系の維持・確保を基本に、本道畑作農業の持続的な発展に取り組んでまいります。

 

(七)財源問題について

日米貿易協定の影響で、関税等の削減・撤廃により、関税等を財源とする牛・豚のマルキン事業や、小麦など畑作物の経営所得安定対策などが、今後、安定的に講じられるかどうか懸念されるところです。

今回の協定の締結で、どの程度の関税等の減少が見込まれるのか、また、道は、これにどのように対応していく考えなのか、伺います。

 

<答弁>

関税等の減少についてでありますが、国においては、日米貿易協定の合意内容の最終年度における我が国の関税収入減少額等を機械的に試算しており、それによりますと、農産品については1,020億円、麦のマークアップについては208億円、それぞれ減少することとされたところであります。

一方、国は、現行の総合的なTPP等関連政策大綱におきまして、農林水産分野の対策の財源については、将来的に麦のマークアップや牛肉の関税が削減することにも鑑み、既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する、としておりまして、道としましては、今後とも、対策に必要な予算の確保を、国に求めてまいります。

 

 

(八)今後の対応について

日米貿易協定により、農畜産物については更なる交渉が行われる可能性があることから、一般質問では、再協議に関する道の認識と対応について伺い、「国は、今後の再協議については、自動車、自動車部品を想定しており、それ以外は農林水産品を含め想定していない」との答弁でした。

しかし、一部の報道では、米議会下院が開催した公聴会で、農業団体から、米や乳製品の市場開放が不十分であり、追加交渉の対象とするよう求める声が相次いだことが報じられるなど、予断を許さない状況にあります。

道は、今後の日米交渉の行方にどう対応していくのか、また、新たな国際環境の下での持続的な発展に向けて、どのように取り組んでいく考えなのか、伺います。

 

<答弁>

今後の対応についてでありますが、日米貿易協定の合意により、グローバル化が一層進展する中、本道の基幹産業である農業が、いかなる環境下においても、その再生産を確保し、持続的に発展していくことが何よりも重要であります。

 このため、道といたしましては、今後の日米間の交渉状況を注視しながら、国に対し、交渉に関する丁寧な情報提供と必要な国境措置の確保を求めてまいります。

 また、関税の削減・撤廃の影響は、長期に及ぶ中で、農業者は将来に不安を抱えていることから、道といたしましては、協定の発効による影響を継続的に把握し、引き続き、国に対し、必要な対策と予算の確保を適時適切に求めていくとともに、改訂される総合的なTPP等関連政策大綱に基づく体質強化や、経営安定に向けた施策も効果的に活用しながら、農地や営農施設、農畜産物の集出荷施設等の生産基盤の計画的な整備、多様な担い手の育成・確保、生産性を高め、省力化を進めるスマート農業の推進、北海道のブランド力を活かした米や牛肉等の輸出の拡大など、生産力と競争力の一層の強化に努め、多様な担い手が将来に希望をもち、安心して営農に取り組み、次の世代に引き継いでいける北海道農業の確立に力を尽くしてまいります。