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2023/12/11

令和五年 北海道議会第四回定例会 一般質問 「国家規模プロジェクトの影響について」

この質問は、現在建築工事が急ピッチで推し進められている半導体メーカー「ラピダス」についての質問となります。

その波及効果を全道に広げようと躍起になっていることを揶揄しているのではなく、正と共に「負の影響」について十二分に予測と把握を行っておく必要があることを明確にする目的で質問させていただきました。

「 波及効果を全道に広げる」とは、一義的には耳障りの良い言葉ではありますが、この広大な北海道においては、この効果を薄めてしまうことにも繋がることを知らなければなりません。

だとすると、必要なことは「効果を広げる」ことなのではなく、「集積しより高めていく」ことなのだと考えています。

このように生み出される「アンバランス」が、結果として「バランス」をもたらすことになることは、経営の常識でもあるのです。

それには、道庁や道民一人ひとりの努力は欠かせません。

「ラピダス」効果のみに果実を期待するのではなく、より多くの企業誘致などを全道各地に実現させなければなりません。

その為にも、世界で起きた「国家規模プロジェクト」の知見を集め、これから起きうる事象について先手を打っておくことが必要です。

この質問の最後にも申し上げたところでありますが、この課題については、単純に解決できるものではありませんし、複合的に見立てる必要があるものと承知しています。今回の答弁をお聞きしながら、今後共に様々な機会を通じて質問・提案して参りたいと考えています。

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A,国家規模プロジェクトの影響について

 

最初に、国家規模プロジェクトの影響について伺います。

ここで注目する国家規模プロジェクトとは、千歳市に建設されようとしている「ラピダス」の事であります。

2022年に設立された半導体メーカー「ラピダス」が、本年2月に総額5兆円を投資し、千歳市に新工場を建設すると発表されたことは、記憶に新しいものとなります。

相前後して、鈴木知事もその誘致に動かれたことをアピールされ、それを受ける形となったラピダス側も歓迎された旨を公表しているところであります。

実際にどのような動きがいつ頃から展開されていたのかをこの場で問うつもりはありませんが、いずれにせよ日本国内に留まることなく世界の耳目を集めることになったことに違いはありません。

このように、ラピダスには、大きな期待が高まる一方で「今の日本の技術で本当に作れるのか」という疑念も出ていることを無視することは出来ません。今後の動向が気になります。

ラピダスには、日本政府も国を挙げた動きを見せていて、2022年11月には700億円もの補助金拠出を、2023年4月には新たに2600億円もの追加支援の発表がありました。これは今後も適宜続くものと思われ、投資総額5兆円、その経済効果は最大で18兆円とも言われる国家規模プロジェクの影響の大きさを実感出来るものとなっています。

そして、国費は基より、道自身にも直接的・間接的な相当規模の補助金等の投入を余儀なくされることが避けられないと見込むのが妥当であります。

私は、この質問で、国家規模での取組みに対して、中止などを含めた後ろ向きの主張をするものではないことをお断りしておきます。まるで「お祭り騒ぎ」のように、総額5兆円という投資規模だけが独り歩きして、表舞台での物語だけが先行していることに危機感を覚えているものなのであります。

時すでに2023年12月、試作ラインの稼働まで2年もない状況です。今後のラピダスと国や政府、そして北海道の本気度やスピード感が注目されることになるでしょう。

そこで以下数点に渡りお聞きします。

 

 

①栄枯盛衰について

最初に、全体の予測と把握について伺います。

と或る一文を紹介します。

「日本でしか出来ない、世界最先端のモノづくりを実現し、ここでつくられる液晶テレビは、高品質の「亀山ブランド」として人気を呼んだ。「環境技術なくして企業の成長なし」この言葉の下、創エネの太陽電池、液晶テレビをはじめ省エネ商品の販売拡大を進める。事業活動による温室効果ガス削減と会社の排出分を均衡させる、「地球温暖化負荷ゼロ企業」へ取り組んだ。」

皆さん、どのように受け止められたでしょうか。どこが聞いたような一文ですし、そのまま現在でも謳われている、実は、似たようなことを今回のプロジェクトでも見聞きすることが出来るのです。

これは、たった20年ほど前の事だったと記憶しています。

私自身もシャープ製のアクオス「亀山ブランド」のテレビを買い求めたことを記憶しています。

しかし、栄枯盛衰、日本の白物家電を中心に栄華を極めたシャープという会社は、世界の潮流に飲み込まれることを避けることが出来ずに、2016年に海外資本に買収され、今では一流の証であった亀山ブランドのテレビを店頭で買い求めることは出来ません。技術の進歩には目を見張るものがあるのが常識でもあります。

道は、国内に限らず世界中の事例から、今回のような国家規模プロジェクトの盛衰について情報を収集し、これから何が起きるのかを予測や把握をしておく必要があると考えています。

まずは、現時点での道の認識と、今回申し上げている予測や把握について淡々と整えておく必要について見解を伺います。

 

<答弁>

 国家規模プロジェクトの影響に関しまして、はじめに、今後の動向の把握などについてでありますが、ラピダス社が進める次世代半導体製造拠点の整備事業は、国が、これまで3,300億円を上限とする支援を実施するなど、国家プロジェクトとして本格的に動き出しており、その推進にあたりましては、国の「半導体・デジタル産業戦略」の中で示されているとおり、日本の半導体産業が自国企業のみの自前主義に陥り、世界のイノベーションから取り残されてしまったことにも留意しているものと承知しております。

 道いたしましては、このプロジェクトを実現し、本道全体の経済活性化と持続的発展につなげるためには、引き続き、ラピダス社や国、千歳市と事業計画などの情報共有を図りますとともに、「北海道半導体関連産業振興ビジョン」の検討に当たりましては、社会経済情勢や国の政策、関連産業の動向、さらには過去の事例の課題などの把握に努めながら、将来的な姿も見据えて策定に努め、各般の取組を戦略的に推進していく必要があると考えております。

 

 

②今後起こり得る事象について

次に、道内、特に千歳地区を中心に近隣地域において今後起きうる事象についてお聞きします。

人手不足、賃金上昇、不動産の高騰、当たり前のようにこれらの影響で倒産する中小零細企業など、これらは既に起こり始めている事象なのです。これからなのではありません。むしろ、今後寄せては引く波のように両面の影響が起こることは明白です。

「ひなた」の効果を高めていく施策についての議論は他にお譲りするとして、今回、私は、「影」が道内に波及する諸効果について、道はどのように捉えて施策を講じていくのかをお聞きしているのであります。

関連する多くの部局として、知事の覚悟に基づいた「ひなた」と並行させる効果的な手立てを配しておいて欲しいのです。

これは道職員の皆さんの責務なのです。

道が、この点についてどう認識しているものか、見解を伺います。

 

<答弁>

 次に、中小・小規模事業者の方々への支援などについてでありますが、この度の、ラピダス社の次世代半導体製造拠点の本道への立地につきまして、道内では、関連産業の進出や、雇用の創出などの経済効果に期待が高まっている一方、エネルギーや原材料等の価格高騰が長期化し、中小・小規模事業者の方々が大変厳しい経営環境にある中、人手不足や賃金上昇、道央圏への一極集中などについて、懸念する声があるものと承知しております。

 このため、道といたしましては、半導体の製造、研究、人材育成等が一体となった複合拠点の実現を目指し、このプロジェクトの成功に向けて、必要な支援に取り組みますとともに、年度内に取りまとめます「北海道半導体関連産業振興ビジョン」のもと、各般の施策を戦略的に推進するほか、引き続き、道内経済の状況を注視しながら、地域経済を支える人材の育成・確保はもとより、厳しい経営環境にあります中小・小規模事業者の方々の事業継続や、新事業展開といった競争力強化向けた支援などにも取り組んでまいります。

 

③知事の覚悟について

次に、知事の覚悟を伺います。

先ほどお話ししたような状況下であったとしても、知事には、更なる誘致や振興策についてリーダーシップを発揮して頂かなければなりません。

知事の覚悟が問われています。知事がそれらの「影」をどう認識しているのか、「影」に対する具体的な施策こそが、北海道の未来に向けた足腰の強い底力に繋がるものと思われます。

正に、知事に対して一年前にお聞きした「知事の北海道観」が問われているものと考えています。北海道知事として不撓不屈の価値観に伴走させる、鈴木知事としての覚悟や手腕が問われているのです。

知事が、誘致を手柄とアピールするのは構いません。しかし、「影」に対する施策を必要以上に、そして長期に渡って施す必要があることを厳に申し上げておきます。

知事の覚悟を伺います。

 

 

<答弁>

 最初に国家規模プロジェクトに関し、今後の対応についてでありますが、道としては、ラピダス社の立地を最大限に活かし、その効果を全道に波及するため、年度内に取りまとめる「北海道半導体関連産業振興ビジョン」のもと、オール北海道で目指すべき方向性を共有しながら、各般の施策を戦略的に推進することとしております。

 私としては、本道経済の先行が見通せない中にあって、より一層の発展を図っていくためには、エネルギー・デジタル・食の3つの分野に一体的に取り組み、相乗効果を生み出し、北海道の価値をさらに押し上げていくことが重要と考えており、引き続き、豊富な再エネを活かしたデータセンターの誘致、さらには、食や観光など北海道ブランドの磨き上げなど、本道のポテンシャルを活かした産業振興に資する施策を展開し、本道経済の活性化と持続的発展につなげてまいります。

 

この課題については、単純に解決できるものではありませんし、複合的に見立てる必要があるものと承知しています。今回の答弁をお聞きしながら、今後共に様々な機会を通じて質問・提案して参りたいと考えていることを申し添えておきます。