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2023/12/11

令和五年 北海道議会第四回定例会 一般質問 「環境影響評価制度について」

宗谷管内猿払村に浮上した再生可能エネルギー(風力)事業計画について、環境影響評価制度(環境アセスメント)が行われようとしている中で、質問を行いました。

この件だけに限らず、道内には多くの再生可能エネルギー事業計画が推進されていて、更に多くの取組みを推し進めなければならない立場での質問でもありました。

しかし、一方で、雄大な大自然を誇る私たちの北海道において、どのようにして自然環境を守っていくのかを無視することは出来ません。

「再生可能エネルギー事業計画」と「自然環境保全」を、どのような立場で両立させていこうとしているかを、鈴木知事に質問させていただきました。

これらは、いずれかを選択するものではありません。どちらかだけを選択することは出来ないのです。

皆さんにもご理解いただけるように、この課題を明らかにしておかなければ、より強力な再生可能エネルギー事業計画の推進はあり得ないのであります。

 

一見すると両立出来そうにない課題ではありますが、今回の答弁で鈴木知事は、両立させることを明言したと理解できます。

北の元気玉は、新エネルギー導入の加速化に取り組んでまいりましたが、これからもその立場を変えることなく、同時に雄大な北海道の大自然を保全することにも注力して参ります。

 

今回の伏線としている「イトウの産卵河川の保全」については、「低減」ではなく「保全」が優先されることを前提として注視して参りますし、同時に当該再生可能エネルギー(風力)事業計画の実現を「イトウの産卵河川の負荷」無く実現出来るのかについて知恵を尽くしてまいる覚悟です。

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C,環境影響評価制度について

次に、道北における環境アセスメントについて伺います。

最初に申し上げておきますが、私は、道内における「新エネルギー導入の加速化」が急務であることを完全に同意していて、より多くの事業者により、更に道自身も主体となって活発なエネルギー事業に取り組む必要があると、機会がある毎に主張してきました。

未来に元気な北海道を繋いでいく為の「稼ぐ北海道」を実現すべく、「食」と「観光」に次ぐ屋台骨として「エネルギー産業の活性化」が欠かせないものと確信しています。

よって、この質問は、道内各所で取組まれている諸計画について賛否を問うものではありません。

本年10月の報道によりますと、「幻の魚」と呼ばれる絶滅危惧種「イトウ」の国内最大の生息地とされる宗谷管内の猿払川水系周辺で、最大59基の風車を稼働させる事業計画が浮上し、自然保護団体や地元の関係者に生態系への影響を懸念する声が上がっているとありました。

幻の魚「イトウ」は、日本最大の淡水魚として認識されています。絶滅危惧種として指定されており、北海道の朱鞠内湖や金山湖、猿払川、天塩川などで存在を確認されています。20年以上生きる長寿の魚であり、1mの大きさに育つまでに10~15年かかると言われています。大きい魚体になると2m以上にまで育つ個体もあるそうです。イトウは、一生のうちに何度でも産卵できる特殊な魚体です。

しかし、絶滅危惧種に指定される程の個体数の減少は、生息地の環境の変化に留まらず、河川構造物の増加、河川の直線化、そして先ほども述べたイトウ自体の成長スピードの遅さが影響しているようです。

そんなイトウの個体数を増やす取り組みは、北海道内で様々に保護活動が実施されています。その代表的な取り組みとして猿払川周辺の環境を整えることで、イトウの餌となる小魚や昆虫などを増やし、イトウが棲み易い環境づくりが地元の皆さんを中心に長年行われてきたことは、知事も承知しているところでしょう。

その上で、知事に以下数点伺います。

 

①環境影響評価制度の進捗状況について

最初に、進捗状況について伺います。

当該事業計画についての環境影響評価制度のうち、10月16日迄は計画段階環境配慮書の縦覧が行われていて、知事は、1月31日迄に知事意見を提出しなければいけないことを承知しています。

道は、これまでどのような対応をされてきたのかを伺います。

 

<答弁>

 環境影響評価制度に関し、はじめに、猿払村などで計画されております風力発電事業へのこれまでの対応についてでありますが、宗谷丘陵南風力発電事業につきましては、環境影響評価法に基づき、9月12日に事業者から道に対し、手続の最初の段階である配慮書の送付がありました。

 道では、配慮書に対する環境保全の見地からの意見作成にあたり、9月19日に北海道環境影響評価審議会に諮問し、11月6日に第1回目の審議を行ったところであります。

 また、道では9月28日付けで関係市町村である稚内市、豊富町及び猿払村に対し、配慮書に対する意見を照会し、11月6日までに回答をいただいております。

 

②環境アセスメントの今後の展開について

次に、今後の展開について伺います。

当該事業計画についての環境影響評価制度は、今後どのような経過を辿ることになるのでしょうか。また、それらのスピード感を含めて教えてください。

 

<答弁>

 次に、今後の手続きについてでありますが、環境影響評価制度では、環境配慮事項の検討結果を示した配慮書、調査・予測・評価の実施手法を示した方法書、調査・予測・評価の結果をまとめた準備書など、段階的に必要な書類を作成・公表しながら手続きが進められます。

 現在は配慮書の段階であり、道では、来年1月31日までに知事意見を事業者に提出し、その後、方法書、準備書の各段階におきましても、関係市町村からの意見や審議会での審議結果を踏まえ、環境保全の見地からの意見を述べることとなります。

 また、これまでの風力発電所に係るアセスメントの例では、配慮書手続きの開始から最終的に評価書が確定するまで概ね3年以上を要しており、本事業につきましては、配慮書に記載された計画によりますと、令和9年度に着工予定とされております。

 

③審議会のメンバーについて

次に、審議会メンバーの選定について伺います。

これまでの意見交換などで、審議メンバーの中に「イトウ」の専門家が含まれていないを教えて頂きました。これは、重大な問題です。特に、道北の猿払地域におけるイトウの生態については、専門家が長年に渡り調査・研究が実施されていて、これらの実態を正しく審査会の皆さんに理解して頂くことが必要です。

私は、この審議会メンバーに「イトウ」の専門家を追加するか、若しくは審議会が聴取できるオブザーバーとして指定し発言出来る環境を整える必要があると考えています。

更には、環境影響評価制度の期間を通して、道自身が、正しい情報を得るためのカウンターパートとしての「イトウ」の専門家に、適切な相談ができる環境を整える必要があると考えています。

道の見解を伺います。

 

<答弁>

 専門家からの意見聴取についてでございますが、北海道環境影響評価審議会は学識経験を有する15名の委員で構成されており、現在、陸水生態系や淡水魚の専門家は在籍しておりませんが、北海道環境影響評価条例では、審議会委員の専門分野以外について調査などが必要となった場合を想定し、必要に応じ、審議会に専門委員を置くことができる旨が規定されております。

 道といたしましては、事業の実施に伴うイトウへの影響につきましては特に慎重に審査する必要があると考えており、今後、イトウの専門家に職員がヒアリングを行うことや、条例に基づく専門委員制度の活用なども含め、審議会において適切に審議いただくよう、対応をしてまいります。

 

④経済活動と自然環境保全の相容れない現実の判断について

最後に、これら相容れない現実の知事の判断について伺います。

北海道における新エネルギー導入の加速化については、国や多くの事業者が取組みを加速していて、道もそれに追従する形でビジネス環境を整えようとしてきました。私は、それてでも不十分と捉えていて、より野心的で積極的な取り組みを重ねる必要があるとまで考えています。

私は、2050カーボンニュートラルが目指す脱炭素社会の実現は勿論ですが、それよりもそれらの経済活動がもたらす「未来の北海道、そして未来の道産子の元気や活力」を渇望する者の一人なのであります。その為に働いてきましたし、これからもそうして参ります。

しかし、一方で、連綿と繋がれてきた北海道の大自然、決して我々人類の力が到底及ばない自然の営みに対して、如何に自然環境を保全していくのかについて、私たちは常に葛藤を重ねながら便利で快適な暮らしを手に入れてきたのであります。

私たちは、これら相容れない判断をどのように行っていかなければならないのでしょうか。

鈴木知事は、これら双方を実現させなければなない責任を負っているものと承知しています。

鈴木知事は、経済活動と自然環境保全の相容れない現実の判断をどのように捉え、どのように執行していこうとしているのか伺います。

 

<答弁>

 再生可能エネルギーの導入に向けた今後の対応についてでありますが、2050年のゼロカーボン北海道の実現に向けては、本道におけるわが国随一の再生可能エネルギーのポテンシャルを活かしていくことは重要であると同時に、本道の豊かな自然環境は、道民の皆様のいのちや暮らしを支える基盤であり、私としては、この恵みを将来に渡って引き継いでいかなければならないと考えております。

 こうした考えから事業実施に際しては、地域の良好な環境が保全されるよう、環境への影響を回避又は十分に低減していく必要があると考えており、再生可能エネルギーの導入に当たっては、環境影響評価制度の適切な運用などを通じ、市町村や専門家の方々のご意見を伺い、事業者に対し適切な対応を促しながら、地域の皆様のご理解のもと、環境に十分配慮した事業が進められるよう、取り組んでまいります。

 

<再質問>

環境影響評価制度について再質問します。

相容れない現実の判断について、知事は「環境影響評価制度の適切な運用を通じ、環境に十分配慮した事業が進められるように取り組んでまいる」と答弁されました。

これでは、判然としません。

「新エネルギー導入の加速化」と「自然環境保全」は、どちらも欠かすことは出来ない要素です。

先ほどの答弁通りだとすると、そこに知事の覚悟を感じることは出来ません。

例え、経済性が十二分に確保出来ていても、例え、環境影響評価制度上満足させられたとしても、それらの事業を推進させられるかの確定要件ではありません。いずれも理由でしかないのです。

最も端的に言い表すならば、それは、要件を満たしたうえでの個別の判断になるのではないでしょうか。

そこには、その時代の北海道知事の相当の覚悟が介在するべきものなのだと確信しています。

道の担当職員の皆さんの業務遂行の延長に判断があるのではなく、北海道知事としての「北海道観」に基づく覚悟によって、もたらされる結果であり、今と未来の北海道民の夢であり、利益とならなければなりません。

今一度お聞きします。

相容れない現実の判断について、鈴木知事の捉え方と、執行方針をお聞かせください。

 

<答弁>

 再生可能エネルギーの導入に向けた今後の対応についてでありますが、ゼロカーボン北海道の実現に向けては、再エネの導入促進とともに、本道の豊かな自然環境を将来に渡って引き継いでいくことが重要と考えております。

道としては、再生可能エネルギーの導入と適切な環境配慮の両立などが図られるよう、取り組んでまいります。

 

この質問については、今後、当該環境アセスメントの進捗に併せて、当該地域を道立自然公園への新規指定などを含めながら、様々に委員会等で関心を以って質問して参りますことを申し添えておきます。