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2015/09/1

9月 環境生活委員会「北海道生物の多様性の保全等に関する条例」の外来種の指定について 質問させていただきました。

9月 環境生活委員会 質問
「北海道生物の多様性の保全等に関する条例」の外来種の指定について

 

8月の当委員会で、本条例の総論について質問させていただきました。
その中で、生物多様性の考え方を位置付けた生物多様性保全計画にあっては保全と利用の両面からバランスを整えていく必要があることを答弁いただいたところです。
生物に多様性があるように、私たち人間側にも考え方や捉え方に多様性が存在していることを認識しなければなりません。
それらは地理的条件や文化・歴史・経済等が複雑に関わっていることから、十分に踏まえて取り組むことが重要であることも確認できました。
これらを北海道民の皆さまと有益に推進していくためには、さまざまな団体・機関と連携しながら積極的な情報発信に努めることが重要であり、保全計画の見直しにあたっては、生物多様性の「認知度」を指標として設定し、具体的な目標に向けて取り組まれると、その覚悟のほども伺ったところでもあります。

この度、生物多様性保全条例に基づく指定外来種の第一次指定案が報告されたところですが、本委員会では、その各論の一部について質問させていただきます。

① まず外来種の指定についてです。
北海道では、先に指定外来種の選定を行うために「北海道の外来種リスト」860種を基本として37種を選定し、そこから緊急性や経済性の観点から12種を北海道環境審議会に諮問し、第一次指定の案として告示される運びと伺っています。
どのような観点で取りまとめられたのか、また今後予定される二次指定以降の選定のスケジュールとその選定基準について伺います。

【道答弁】

指定候補種の選定についてでありますが、指定外来種の指定の目的は、本道の生物多様性への影響を防止することであり、第一次指定の候補種の選定にあたっては、本道の生物多様性に現に著しい影響を及ぼしている、または影響を及ぼすおそれのある外来種のうち緊急性が高いものに着目し、専門家などの意見等を踏まえて37種を選定し、社会的・経済的影響や、他法令による同様の規制の有無、防除の実効性などを考慮し、12種に絞り込んだ。

第二次指定の選定については、一次指定から外れた種も含めて、専門家などの意見を伺いながら、生物多様性への影響に係る科学的知見の集積や本道への定着状況などを勘案のうえ、指定の必要性などを検討していく考え

 

② 第一次指定の選定過程において、社会的・経済的影響が認められた種とは具体的に何であったのか、また具体的にどのような懸念や心配が出されたのかを伺います。更にはそれらの今後の指定の可能性についても伺います。

【道答弁】

社会的・経済的な影響についてでありますが、最初に候補として選定した37種のうち、ニジマス・カブトムシ、ゲンジボタルの3種については、市町村などから観光資源としての活用など地域振興との関わりから慎重に検討してほしい党の意見があり、道としてはこうした意見も考慮して、第一次指定の候補とはしなかった。

ニジマスをはじめ、これらの種については、適切な管理や利用のあり方などを含めて、市町村や関係団体、専門家などのご意見を伺いながら引き続き検討していくことが必要と考えている。

 

③ では、指定外来種の選定から外れたニジマスに関して伺います。
ニジマスを指定外来種の指定から除外するように、日本国中は基より世界から2万5千筆を超える署名を集めて、昨年三月に道へ提出したニジマス未来プロジェクト(後に北海道トラウト未来プロジェクトに改称)によりますと、生物多様性の保全という目的に対して、ニジマスの排除が有効で且つ第一次指定で優先されることは考え難く、研究・事象の説明が不十分であること、更には実際に排除(駆除)の方法も未確立で不可能に近いこと、その手段として放流禁止という結論は、現状を熟慮した方法とは考え難いことのことでありました。
現状でニジマスは観光資源・釣り資源として有効に機能しており、無作為な放流の問題は残るものの、官学民がお互いを尊重しつつ知恵を出し合うことで、一律的な駆除や放流禁止などではなく個々の地域地域の実情に合った有効で適切な管理方法が確立できると考えています。
静岡県富士宮市ではこのニジマスを市の魚として制定されているほど身近な魚なのでもあります。
そのような中で、国の生態系被害防止外来種リストに基づく「産業管理外来種」とした意味について伺います。

【道答弁】

ニジマスについでありますが、本年3月、国においては、生態系に被害を及ぼすおそれのある外来種に関していわゆる「生態系被害防止外来種リスト」を公表している。このリストでは、ニジマスは古くから大量に養殖・放流がされてきている水産上の重要魚種となっている一方で、北海道では広い範囲に定着しており、いったん定着すると在来種との競合が生じるため、これ以上の分布拡大をしないよう、その利用にあたっては適切な管理が必要とされる「産業管理外来種」として位置づけられている。

こうしたことを踏まえて、今後道内での適切な管理や利用のあり方などを含めて、市町村や関係団体、専門家などのご意見を伺いながら引き続き検討していくことが必要と考えている。

 

④ 北海道が将来に渡って多くの旅行客・ビジネス客の皆さまにお越しいただくことができる大地であるためには、保全性という視点と同時に、経済性という利用する視点が、他の地域と比べて大きな優位性を確保できる強みとなり得ることは言うまでもありません。
知床の世界自然遺産をはじめとする、四季に富み、雄大な自然と共生する私たちは、北海道にお越しいただき、北海道を堪能していただき、北海道を味わっていただき、北海道で感動していただけることが、急激な人口減少が避けられない北海道民が未来・将来に渡って明るく暮らしていく元気の源となることに違い有りません。
〇〇ツーリズムというコンテンツ展開、例えばグリーンツーリズムやサイクルツーリズム、フィッシングツーリズムと無限に広がるその可能性は、まさしく北海道の多様性を活かしたものであると捉えることができます。

保全することと、利用すること、いかにバランス良く両立させるかが北海道に問われる
こととなるはずなのです。
北海道は今後の指定外来種の選定にあたって、どのようなバランス感覚をもって采配を振るっていくお考えなのかを伺います。

【道答弁】

外来種についてでありますが、生物多様性保全条例に基づく「外来種対策基本方針」では、指定外来種を選定する際には、これまで答弁しているように、指定に伴う社会的・経済的影響を考慮することとしている。

今後の指定にあたっては、生物多様性への影響を防止する観点と、地域における利用方法や指定に伴う影響など、その種を取り巻く様々な状況を勘案しながら、慎重に検討していく考えであり、保全と利用のバランスを保ちながら本道の豊かな生物多様性を確保してまいる。

 

⑤ 温暖化などの気候変動に伴って動植物の分布など生態系の変化が起きていることは明らかであります。
サケ・マスやサンマなどの海洋資源の漁獲量の激減や本来生息してなかったはずの熱帯性の魚が網に掛かることも珍しくなく、更にはブリにあっては来遊量が飛躍的に増加していると聞いています。
北海道を取り巻く自然環境が足もとから大きく変化し始めている中にあって、それに伴い変化を続ける生物多様性をどのように保全していくかを伺うと共に、指定外来種として指定された種や、そもそも道内に生息していなかった種が、将来の環境の変化により、自然の状態で生息域を拡大することで道内に生息するようになった場合にどう扱うのかを伺います。

【道答弁】

自然環境の変化への対応についてでありますが、8月5日に開催した環境審議会自然環境部会において、指定外来種の指定についてご審議いただいた際、環境が変化することによって生物多様性も影響を受けるため、現時点で外来種として扱っている種も長期的に見た場合には、自然の状態でも本道に侵入してくる可能性があることが指摘された。

指定外来種については、本道における現時点での生物多様性への影響を防止するものであり、将来的に気候変動などの自然環境の変化による本道への生息域の拡大などにより、見直しの必要が生じる場合もあると考えている。

 

 

では最後にいくつか指摘をさせていただきたいと思います。

今回、新たに指定外来種として指定する種の指定などについて伺いましたが、生物多様性の保全や利用を考える中で、外来種として扱うのか在来種として扱うかの判断が難しい種や、在来種であっても、その生息や分布に人の手が大きく関わっていて、積極的に利用を検討すべきと考える種もあります。

ヒメマスは、大昔に阿寒湖などに遡上したベニザケの陸封型として位置づけられていて、アメリカ・カナダ・カムチャッカ半島、北海道阿寒湖やチミケップ湖を原産とされていていますが、一説によると遡河回遊性の高い種であることから外来種と言ってもよいと判断できます。降海型という点ではニジマスも同様なのかもしれません。
どの時点の北海道の在り様を保全しようとしているのかにも寄りますが、北海道の外来種リストにも含まれないヒメマスは、ベニザケの陸封型であることからその矛盾が指摘されるところでもあります。
そのヒメマスは、道内の多くの湖沼に食用として移植・増殖されてきており、その点でもニジマスと類似した点が多いことは明らかなのであります。
学説的に言ってヒメマスが在来固有種で、ニジマスが外来種であるという説には、議論が尽きないことであると伺っています。
生物多様性の保全には賛成であっても、外来種の選定にあっては異論が尽きないのは、地理的条件や文化・歴史・経済等が選定基準に大きな影響があることの証左だと認めざるを得ないのが現状であると考えています。

一方、サクラマスについては、水産資源としての兼ね合いから、浜益川や忠類川のサケやカラフトマスのように河川及びエリアを指定してライセンス制など試験的な採捕利用方法で調査期間を設けていくことも可能であると考えています。
北海道におけるサクラマスは「獲るな・触るな」なのではなく、福井県九頭竜川における遊漁として確立された地方活性化策などにみられる、地方の観光経済活性化や運営における雇用促進のためなどを念頭にアイディアを持ち寄って話し合いの場を設けていくべきだと考えています。
この課題を生物多様性の問題として捉えなおすと、経済的利用の促進は適切な管理ルールの下であるならば、積極的に取り入れていくべきなのだと考えられるからなのです。
また、それは産卵親魚を守り、翌年のスモルトサクラマスやヤマメの増幅(間接的増殖)に繋がっていくのだと考えています。
尚、これらついては、経済部や水産林務部、環境生活部と横断的な問題となるために簡単に結論を導き出せることにはなりません。あえて課題を提起するに留めておくこととします。

更には、この議論を深めていく中で、そもそも、私たちは、どの時点の北海道の生物の多様性を保全しようとしているのか、もっとも大切な視点が固定されていないことに気づかされています。
在来種を保全することと、温暖化をはじめとする、常に変動が伴う自然環境の中にあって、希少種を保全すること、外来種の蔓延を防止することと、その最中(さなか)にあって社会的・経済的背景から、それらを利用することと、実に複雑で単純ではない議論がそこには存在するのです。
これらを混在し、結論を急ぐことは稚拙でありますが、かと言って、日に日に環境が変化する現実を前にして議論を放置することは、今を生きる私たちが未来の世代に対する責任を放棄することになってしまいます。

まさしく道が主体となって、市町村や関係団体、専門家などのご意見を伺いながら、引き続き検討を重ねることに尽きると考えています。
論点を整理し、旬を外さずにその時々で方針を打ち出していくことが必要なのだと考えています。

これらの課題に関しては引き続き、今後の委員会で議論を深めて参りたいと考えていますので、よろしくお願い致します。

以上で、質問を終えたいと思います。 ありがとうございました。