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2016/02/25

2月 環境生活委員会 「イランカラプテ・キャンペーン」について ※答弁付き

※この質問に関しては、本キャンペーンを皮切りとして「魅力的なアイヌ文化」を利活用し、北海道へ多くの皆様にお越しいただくことが出来る『強み』となる政策として位置付けており、今後も引き続き具体的な政策(行動)へとつなぐことが出来るように環境生活委員会で断続的に質問を続けてまいります。

 

 

平成28年2月25日 環境生活委員会 質問

【イランカラプテ・キャンペーンについて】

 

最初に触れておきますが、わたくしは、北海道におけるアイヌ政策について一家言を持つ者であります。この度においては、アイヌ文化振興を「北海道の強み」として活用していく方向性についての異論は全くございませんので、イランカラプテ・キャンペーンを更に応援する立場から質問をさせていただくことと致します。

 

①    北海道での取組みについて

これはご存知のようにアイヌ語で「こんにちは」という意味で、挨拶の時に使う言葉でありますが、道では「アイヌ語のこの挨拶を北海道のおもてなしの言葉に」というキャンペーンが始まってから3年が経とうとしています。

昨年春に当選させていただいた1期生議員が30人もおりますし、新成人・新社会人や昨今大幅に増えております観光客の皆様とさまざまな局面で、新たにこの取組みに接することになる方も多いと思われます。

このキャンペーンは、アイヌの人たちの歴史や文化の理解促進を図ることを目的に、国の内閣官房が中心となり、官民学の連携の下、道内を中心に展開されてきたと承知しております。

北海道もその一員としてキャンペーンに取り組んできたと聞いていますが、現在、どのような体制でこのキャンペーンが推進されているのかをまずは伺います。

 

【答弁】

イランカラプテ・キャンペーンについてでありますが、このキャンペーンの推進母体であるイランカラプテ・キャンペーン推進協議会は、平成25年7月に設置されており、そのメンバーには、道をはじめ、国の内閣官房アイヌ総合政策室や北海道開発局、北海道運輸局等の機関、札幌市や白老町、平取町、また、北海道アイヌ協会やアイヌ文化財団のほか、北海道大学や札幌大学、北海道観光推進機構等が参加しており、この協議会においては、これまで、イランカラプテ「こんにちは」からはじめようのポスターのほか、バッチやクリアファイル等のPRツールの作成・配布や道内外でのイベントの開催などに取り組んできているところ。

このキャンペーンに関する道の取組としては、庁内放送による来庁者への周知や、主催イベントでのPRツールの配布、さらには、道政広報番組での紹介をはじめ、フェイスブック「ピリカカンピ」(アイヌ語で、美しい手紙という意味)の立ち上げによる、主に若い人を対象とした、道や民間企業、関係団体が実施するイベントの情報発信などを通じ、キャンペーンのPRに努めてきたところ。

また、知事をはじめ職員自らが、実際のあいさつの言葉として用いているほか、道庁本庁舎1階ロビーで開催している「アイヌ文化等情報発信パネル展」や札幌市内で開催する「アイヌフォーラム」でのPRに加え、新千歳空港と海外の都市との新規就航便で訪れる海外からのお客様に対して、職員が出向き「イランカラプテ」の横断幕と挨拶でお出迎えするといった取組も行っているところ。

 

②    民間での取組みについて

国の機関や大学をはじめ、多くの民間企業の方が、このキャンペーンに関わってきたことが判りました。

先日、沖縄県の石垣島を訪れた同僚議員が、機内アナウンスで、地域の方言による歓迎の言葉が流れ、それを標準語に直したアナウンスもあり、非常に親しみを感じたと伺うことが出来ました。

道内に就航している航空会社でも、期間限定ではあったがイランカラプテ・キャンペーンの説明が機内で行われたことがあるとも聞いております。これは航空会社各社に協力の輪を広げていく働きかけが必要です。

いずれにしても、多くの方に北海道の様々な面にも興味を持っていただく入口として、航空機だけに限らず、様々なアプローチを用いることが必要となってきます。

そこで、これまで、民間企業や民間団体の皆さんによって、どのような活動が展開されてきたのかを伺います。

 

【答弁】

民間による取組についてでありますが、イランカラプテ・キャンペーン推進協議会には、この趣旨に賛同する企業や団体、個人に「サポーター」として登録していただくこととしており、このサポーター企業によるPRの主なものを申し上げると、

まず、サッポロビール(株)では、これまで、イランカラプテのロゴマークを使ったオリジナルデザインの缶ビールを7種類作り、キャンペーンのPRに協力していただいている。

このうち、サッポロビールとイオン北海道グループの共同企画によるものとしては3種類が発売されており、平成26年秋発売の「北海道遺産の旅缶」については売り上げの一部、約50万円をイランカラプテ・キャンペーン推進協議会の構成員であるアイヌ文化財団に寄付していただいており、また、昨年夏に発売された「北海道のごちそう缶」は道外のイオングループのスーパーなどにおいても販売され、キャンペーンの全国的なPRに協力していただいたところ。

また、北海道コカ・コーラボトリング(株)では、昨年8月、道東自動車道の上浦幌パーキングエリアにキャンペーンのロゴマークを前面と側面に施した自動販売機を設置していただいており、日本航空(株)では、機内誌「スカイワード」の平成26年8月号に、キャンペーンを紹介したほか、年2回発行の機内配布情報ブック「ハピリカ」やポスター等へロゴマークを掲載していただいたところ。

さらに、北海道空港(株)では、新千歳空港国内線ターミナルビルの2階にイランカラプテの大型のバナーを掲示しているほか、1階の到着手荷物受取場においてPRムービーを放映している。

また、札幌大学のウレシパクラブとJR北海道等の協力によって札幌駅西側コンコースに、木彫りのアイヌの古老の像である「イランカラプテ像」が設置されている。 

 

ただいま紹介申し上げた企業・団体などのサポーターは、推進協議会を設立して間もない25年度末では58団体、37個人であったが、現在では、117団体、91個人と、着実に増えておりキャンペーンへの協力の輪は広がっているものと考える。 

 

③    キャンペーンの認知度について

ずいぶん多くの民間企業の方が、このキャンペーンの主旨に賛同されて、いろいろな活動を展開していることが判りました。

そこで伺いますが、このキャンペーンの現在の認知度はどれ位なものとなっているのでしょうか?

北海道民と道外の方々でも状況は異なるでしょうし、まして海外観光客となればその手段は大きく異なるはずです。定期的な調査と結果分析による対策が必要です。

北海道の強みとして活かすには、適した戦略戦術が必要です。目標値を含めた現状と見通しをお示しください。

 

【答弁】

キャンペーンの認知度などについてでありますが、推進協議会の事務局を務める内閣官房のアイヌ総合政策室では、毎年度末に、インターネットを用いた調査により、道内と首都圏で、それぞれ四百名、合計八百名を対象とするアンケートを実施し、キャンペーンの認知度などを調査しているところ。

その結果、「イランカラプテ」を「何度も見聞きしている」「見聞きしているような気がする」を合計した割合は、道内では、平成25年度の31.7%から平成26年度には33.6%と、2ポイントほど高まっており、首都圏では、平成25年度の22.5%から平成26年度には29.3%まで上昇し、全体では、平成25年度の27.3%が、平成26年度には31.4%と、前年度と比較すると約4ポイントの上昇となっている。

このキャンペーンについては、イランカラプテという言葉を切り口として、アイヌ文化に対する理解をより深めてもらうことを趣旨としているため認知度について、特別の目標値等の設定はしていないが、道としては、今後とも、このイランカラプテ・キャンペーンの趣旨に賛同していただくサポーターの協力を得ながら、今後さらにアイヌ文化に関する理解や

キャンペーンの認知度を高めていけるよう、他の推進協議会メンバーとともに取り組んでまいる考え。

 

④    今後の展開について

イランカラプテを普及させていくことは簡単ではないし、時間を掛けて地道に続けていくことが必要だと考えます。せっかくこのキャンペーンの主旨に賛同するサポーター企業の活動の輪が広がってきているところなので、さらにキャンペーンを盛り上げて、多くの人たちに、北海道らしいアイヌの人たちの歴史や文化を理解していただくべきだと考えますが如何でしょうか?

先日、笠井副委員長と太田委員に同行させていただき北海道博物館を視察させていただきました。それは、展示内容を大きく刷新させたばかりではなく、来館者の身近な視点から興味や理解を深めていただけるように展示方法を工夫されていることに感心させられたところであります。石森館長をはじめとする多くの学芸員の皆さんには頭が下がる思いです。

国では、キャンペーンの重点実施期間を平成25年度から平成27年度と定めており、本年度で終了する予定となっていると聞き及んでいます。

しかし、4年後の2020年には東京オリンピック・パラリンピックをキッカケとして海外からたくさんの観光客が北海道を訪れ、それに合わせて、白老には「民族共生の象徴となる空間」がオープンされることになっています。

さらに、札幌市でも2026年の冬のオリンピック・パラリンピックの誘致の準備を進めているところでもあり、自ずと北海道に対する関心は拡大してくるものと容易に想像することができます。

その期待を逸らすことなく、十分に深めていただく為には、少なくともそれまではこのキャンペーンを続けるべきだと考えていますが、キャンペーンの今後の見通しと、北海道としてこのキャンペーンにかける環境生活部長の決意を伺います。

 

【答弁】

今後の展開についてでありますが、イランカラプテ・キャンペーンの重点実施期間は、今年度末までの3カ年となっておりますが、3月下旬に開催される推進協議会では、来年度以降のキャンペーンの継続実施や活動方針が決定される見込み。

アイヌ文化政策に関しては、今後、2020年に国立のアイヌ文化博物館など民族共生の象徴となる空間が開設される予定であり、また、その後開催される東京オリンピック・パラリンピックの、開会式等でのアイヌ文化の紹介を国に要請しているところであり、道としては、こうした動きと連動し、国や民間企業等と協力してこのキャンペーンを進めていく必要があると考えている。

こうしたキャンペーンを通じて、道民の皆様が、「イランカラプテ」をおもてなしの言葉として、自然に使っていただくとともに、国内外から本道を訪れる多くの皆様に、アイヌ文化の魅力を理解していただけるきっかけとなるよう、取り組んでまいる。

 

【指摘】

今月15日から18日まで、九州の福岡、佐賀、長崎へ、本委員会の皆さんとご一緒に道外視察へ伺ったところであります。

16日に伺った「吉野ヶ里歴史公園」での視察では、国立と県立それぞれの管理の下で、それぞれの役割を明確にして魅力的な空間を提供されていました。

年間に60万人を超える観光客の皆さんが、お越しになられているそうです。

ここで考えさせられたことは、2020年、白老に完成される「民族共生の象徴となる空間」についてであります。

内閣官房が中心となって進められているイランカラプテ・キャンペーン然り、白老の空間然り、国が進める政策に従って私たちが実行するだけなのではなく、また一員として加わるばかりなのではなく、より主体的に、当事者として、国の政策に不足がある部分を

「北海道力」を活かして独自の政策を展開するなど、魅力あふれる政策へと昇華させなければなりません。

なぜならば、これらは「あること」に満足するものなのではなく、「知っていただく」「興味を持っていただく」そして「より多くの方に北海道にお越しいただく」ためになければならないものであるからです。

よって、イランカラプテ・キャンペーンは勿論のこと、白老の空間の準備にあたっては、北海道がそれらのわきを固める独自の政策を並走させて盛り上げていく必要があると考えています。

更には、過日報道で報じられている年間来場者数100万人という設定は、決して容易にクリアできるものではありません。このキャンペーンの成果が大きく影響するものと考えられますし、その後の独自の営業活動による成果が問われることとなります。幾ら国立の空間だとはいえ、他人事にしておくことは出来ないのです。

 

また、17日に伺った「グラバー園」での視察では、指定管理者は建設会社を中心とした4社の企業体で構成されていて、営業部長職を専属で配置し、ホテル営業経験者を充てて効果をあげられているそうです。

指定管理者が主体的に営業を展開する中で来場者数(平成元年200万人超であったものが70万人程度まで落ち込んでしまう中で指定管理者制度がスタートし、現在では120万人超程度)を回復させつつあるばかりか、パンフレットや音声ガイドシステムなど数多くの戦術には感服させられるものばかりでありました。

また事業収入面でも長崎市からの補助金が一切出ない中で、年々設定される入場者数を超えた収入に対しては、その半分を市側に支払うこととなっているそうです。

まさに、ぶら下がりの政策なのではなく、自立した戦略を実践することで優先させることを明確にして確実に実行されていく有様は、是非とも見習うべきものが多いと確信できました。

これらの点については、また別の機会に質問させていただくこととします。

 

いずれにしても、高橋はるみ知事が、北海道創生総合戦略に掲げた「外国人観光客300万人」「道産食品輸出1000億円」各プロジェクトを実現させるための諸策を展開する中で、その実現ばかりではなく、その先を見据えた手段としてアイヌ政策を有効的に実現させていく必要が私たちにあるのだということを指摘して、質問を終わります。

 

ありがとうございました。